データ分析の第一人者、レオ・レビン「データはいかにテニスを変え、今後どのような影響を及ぼすのか?」

100年以上もの間、テニスは他のチームスポーツとは異なり、あまりデータを重んじてこなかった。バスケットボール、野球、アメフトは様々なデータを利用し、シュートの成功率、打率、得点数によって、チームや選手個々のパフォーマンスを評価してきた。しかし、テニス選手は主に勝利数、敗戦数、タイトル数やランキングによって評価されてきた。ウインブルドン王者が64 %のファーストサービスを成功させようが、世界ナンバーワン選手が試合を通してバックハンドのスピードが時速124㎞だろうが、あまり多くの者は関心を持たなかった。
 すべてはコンピュータの時代に変わった。過去に夢見た以上の物凄い情報量が手に入るようになり、コーチ、選手、メディア、ファンは突然、あらゆる種類の試合のデータを鋭く分析し始めた。その影響で重要なのは勝ち負けだけでなくなった。どのようにして勝ったのか、なぜポイント、ゲーム、セットを取れたのか、あるいは落としたのか。トレーニング法、ストロークの配球、戦術、さらには用具でさえもより深く詳細に分析され、数値化されるようになった。 今回は、1982年にテニスのための初のコンピュータ・システムを導入したレオ・レビンに話を聞いた。急成長を遂げている分析論の分野において、自分自身が果たしている多くの役割と、テニスがよりよくなるために分析論はどのように役立ってきたのかを解説する。【2018年6月号掲載記事】

インタビュアー◎ポール・ファイン 写真◎本人提供、Getty Images

Leo Levin(レオ・レビン)◎SMT(スポーツメディアテクノロジー)社でスポーツ分析論のディレクターを務め、フロリダのジャクソンビルを拠点にする59歳。グランドスラム120大会以上、そのほかのツアーで数えきれないほどの大会数から抽出したデータを、ATPなどに提供してきた

「正確に測っていないのは、予想していることになる」 ――Tennis Analytics.netのスローガン

「私は絶対に予想しない。データを手にする前に理論を立てるのは大きな間違いである。さもないと、少しずつ、事実に理論を合わせていくのではなく、理論に合うように事実を捻じ曲げ始めてしまうものなんだ」 ――シャーロック・ホームズ

Q1|スポーツのデータ分析の分野はいつからテニスを取り上げ、どのようにして変え始めたのですか?

A 1982年、私はテニスの一番最初のコンピュータ化されたデータを発展させようとしていた。テニスのポイントの結果を3つの基本的分野においてどう表現するかが重要なカギだった。ポイントは、ウィナー、フォーストエラー、アンフォーストエラーの3つで終わる。この分け方によって、今日テニスをどのように観るのかが確立された。

USオープンの試合を解説する(左から)レオ・レビン、メアリー・カリージョ、エリザベス・オブライエン

Q2|テニスのデータ分析にはいつ頃から興味を抱き始めたのですか?

A 私はカリフォルニアのスタンフォード大学から8㎞の場所にあるロスアルトスのフットヒルカレッジのテニスチームでプレーしていた。自分がプレーしていないときは、チームメイトの試合を見ながらデータを収集し、彼らが上達するための情報を選手やコーチに提供した。

Q3|あなたは大学時代にチームメイトを急激に上達させる手助けをしたと聞きました。具体的にどのような方法ですか?

A 当時キーとなったのは、誰もそんなデータを見たことがなかったこと。そんな情報を手に入れる方法を誰も知らなかった。自分は科学者ではない。集めた情報を見て、彼らが理解できるようにわかりやすく解説したんだ。私にはデータを取り出して、コートで実際に起こっていることと関連づけることができた。「これが君の試合のデータだ」と言ってポンと渡すだけでなく、ちゃんと説明も加えた。有能な選手は、より効果的に、特に大事な試合でそのデータを生かすことができた。

Q4|アガシやマレーのコーチを務めた元世界4位のギルバートもあなたのチームメイトでしたが、彼のことも手助けしたのですか?

A 確かにブラッドもチームにいた。当時の面白い話を教えてあげよう。1年前の彼はチームのナンバー2プレーヤーだった。ナンバー1の選手が、州大会決勝でブラッドと戦うことになったとき、私のところへ来て「どうやったらブラッドを倒せる?」と聞いてきた。そこで私は彼に必要な情報、勝つために必要な戦術を授け、彼の優勝に一役買ったんだ。ブラッドは準優勝のトロフィーを木に投げつけて悔しがり、次の年はすべての試合に勝つと誓った。そして本当に翌年は全勝したよ。

現役時代のブラッド・ギルバート

Q5|鮮明な画像、トラッキング技術、スタッツのアプリやテレストレーションによって、グランドスラム大会で、選手、コーチ、実況、メディアに何が勝敗を分けた要因なのかを分析して説明してきたのですか?

A 私がスタートしたとき、テニスの試合のデータ収集はまったく継続的に行われていなかった。だから最初に立ち上げたのが、ただ単純な現在マッチスタッツとして知られているものだ。これらのデータはチェアアンパイアの記録から引っ張り出した。この手法は90年代初頭にATPでスタートした。その頃、我々は選手の1年を通したデータを収集していたおかげで、解析の次の段階に進むことができた。そこから大きく広がっていった。最初にサービスのスピードを出すシステムを開発し、そこにさらにデータを加えることで、選手がサービスのスピードをベースにしたデータをもとに、勝敗が決まる要因を解析した。技術の進歩によってトラッキングビデオテクノロジー、バーチャル画像を利用してコート上で実際に何が起きているのかを、データとして見られるようになった。

初期のテニスのデータはチェアアンパイアの記録から出した

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