ロジャー・フェデラーは35歳のとき、いかにその「強さ」を取り戻したのか?
強靭な肉体、力強いバックハンド、賢いスケジューリング、努力と才能、チームと家族とファンのこと……15のテーマでフェデラーを語る。【2017年10月号掲載記事】
文◎ポール・ファイン 写真◎小山真司、毛受亮介、Getty Images 構成◎編集部
Paul Fein◎インタビュー記事や技術解説記事でおなじみの、テニスを取材して30年以上になるアメリカ在住のジャーナリスト。多くのトップコーチ、プレーヤーを取材し、数々の賞を獲得。執筆作品はamazon.comやBN.comで何度も1位となっている。テニスをこよなく愛し、コーチとしても上級レベルにある
「フェデラーは明らかに10年前よりもうまくなっている」—— ジョン・マッケンロー
ロジャー・フェデラーはウインブルドン決勝でマリン・チリッチを6-3、6-1、6-4で下して格の違いを見せつけると「この2週間、ここで自分が成し遂げたすべてのことを、心から誇りに思っている。これまでのキャリアの中で〈最高のプレー〉だったんじゃないかな」と語った。
生涯19個目のグランドスラム・タイトルを36歳の誕生日の23日前に達成したのはダブルの快挙と言える。専門家たちもフェデラーの意見に同意する。「彼はキャリア最高のプレーを見せた」と評価するのは、過去にフェデラーのコーチを務めたポール・アナコーンや自身もスーパースターだったピート・サンプラスだ。ジョン・マッケンローはウインブルドン決勝の前に「フェデラーは明らかに10年前よりもうまくなっている」と評した。
ちょうど10年前、“マイティー・フェド”はウインブルドン5連覇を決めると同時に、過去4年間のグランドスラムで11度目の優勝を達成した。この頃がフェデラーの全盛期だと言われてきた。つい、最近までは……。
2012年のウインブルドン以来、グランドスラムのタイトルから遠ざかっていた期間をフェデラーは「苦難の時期」と振り返る。だが、今年に入り、オーストラリアン・オープンとウインブルドンの2つのメジャータイトルを獲得。この“ダブル”は自身2009年以来のことで、最多グランドスラム獲得の記録を「19」に伸ばした。
過去にフェデラーは「20回優勝して40歳までプレーする」とジョークを飛ばしたものだ。数年前までは誰も本気で信じなかった2つのシナリオが、今は現実味を帯びている。特に「20」という魔法の金字塔はあと一つまで近づいている。
過去に20を超えた選手は3人しかいない。マーガレット・コート(24回)、セレナ・ウイリアムズ(23回)、シュテフィ・グラフ(22回)だ。ケガさえなければ、8月28日に始まる今季最後のグランドスラムとなるUSオープンでも、優勝候補の筆頭として臨むだろう。
この年齢を感じさせないレジェンドは、いかにして、高い運動能力(手と目のハンド・アイ・コーディネーション、スピード、パワー、スタミナ、アジリティ)を必要とするスポーツで、トップの地位に返り咲くことができたのだろうか。しかも、多くのチャンピオンは10代後半や20代前半で優勝を成し遂げている。ここにこの興味をそそられる疑問の答えを並べていく。
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