杉田祐一「50の質問」キャリアハイの36位は絶対にまた超えることができる」Player File 4
Q16プロになってから思い出に残っている大会は?
「これもひとつに絞るのは難しいですね……。でもやっぱりツアー初優勝したアンタルヤですね」
2017年のアンタルヤで日本男子史上3人目、芝コートでは初となるツアー優勝を飾る
Q17あらためてツアー初優勝を振り返ると?
「自分のテニス人生を認めさせてくれたというか、すごく報われた気がします。ずっと思うようにランキングも上がっていなかったですし、前年までは150位あたりをうろちょろしていたのに、一気に上がっていく大きなきっかけにもなったので。世界で戦ってきたということを証明することができた大会です。やっぱり芝に助けられましたね(笑)」
Q18自分のプレースタイルを自己分析すると?
「ベースラインから低い弾道で攻撃していくプレースタイルですね。タイミングを早くして、同じようなテンポで、『機械的なテニス』というか。それが強みだと思っています。一定のリズムというのは、場合によっては相手にとってやりやすい部分もあると思いますが、はまったときには簡単には抜け出せない。相手にとってそれはイヤかなと思います」
Q19さらにテンポを上げたり緩急を意識したりはしていますか?
「30歳を超えてきて、相手の不意を突く、相手のリズムを崩すようなテニスもしていかなければならないとは思います。でも、それで逆に自分のリズムが狂ってしまったら元も子もない。緩急をつけるということは、一方で自分の持ち味を削ることにもなるので。そこをうまく融合させながら、自分を殺さず良さを最大限に出せるようなプレースタイルを突き詰めていければと思っています」
Q20試合の中で自分の調子のバロメーターは?
「技術的な部分ではやはりサービスゲームのキープ率がバロメーターになります。僕のような選手はどれだけブレークできるかが勝負なのですが、キープ率が上がれば相手のサービスにもプレッシャーがかかって、自分のブレーク率も上がっていきますから。あとは試合の入り方ですね。やっぱりスタートがよければ試合全体の主導権が握りやすくなります」
Q21キープ率を上げるにはサービス自体が重要になります。
「いろいろと取り組んできて、今はいい感覚があります。それでも、もっと安定感が増してくればいいし、まだまだ突き詰められる部分はある。自分の中でもしっかりと確信が得られるようにやっていきたいです。やっぱりサービスの調子がいいときは、間違いなく成績もいいですから」
Q22ショットで一番の武器は何ですか?
「何かひとつというよりオールラウンドであることですね。何でもできる、ということ。その上で相手に嫌がられるような粘り強さだったりということが武器になっていくと思います」
Q23どんな展開でポイントを取ったときが一番気持ちがよいですか?
「こちらの早い一定のテンポに相手が嫌気が差して、根負けするようにミスを引き出せたときですね」
Q24一番悔しいポイントの取られ方、失い方は?
「逆に組み立てて組み立てて、最後の最後でエラーが出てしまったとき。体力勝負になって、どっちに転ぶかというときに、最後にギアを上げられずに根負けしてしまったときは本当に悔しいです。メンタル面も含めてやられてしまったというか」
Q25自分のメンタル面を自己分析すると?
「波が激しいということはすごく自覚しています。はまったときはどんなに追い込まれた状況でも逆転できる、盛り返せるという気になるし、実際そうすることもできるんですけど。思うようにいかないときはプッシュできなくなってしまいますね……」
Q26乗っているときの爆発力は魅力でもあります。
「もうこうなったらアップダウンの激しさというのを認めてあげても面白いのかなと。波に乗ったときに、できるだけ一番高いところを長く維持する。それでダメになったら3ヵ月お休み、みたいな(笑)。もちろん僕のようなリズムとテンポが大事なテニスでは、試合の中でもツアーの中でも、メンタル的にも一定のアベレージを保てるほうがいいと思うんですけど、いつまでもたってもこれだけ波があるということは、もうその波の激しさを楽しむしかないかなと思います」
Q27メンタル面の今後の課題は?
「たとえ波があったとしても、その全体の位置を高いところにもっていけるようにしなければならない。特に波の頂点はもっと上げていかないとツアーで勝つことはできませんから」
Q28飛躍のシーズンとなった2017年もメンタルの波は高いところにありましたか?
「一気にランキングが上がったときは本当に高いレベルをずっと維持できていたかなと思います。ただ、その後、落ちていったときに踏ん張れなかったことは大きな課題です。あそこで落ち込みを最低限にしていれば、ランキングもある程度は維持できていたかなと思うので」
Q29 2017年はツアー初優勝、グランドスラム初勝利、自己最高36位を記録するなどキャリアハイのシーズンでしたが、何がきっかけだったのでしょうか?
「自分の武器をどこまで出せるか、ということに特化しようと思っていました。タイミングや早いテンポであったり、フィジカルであったり、それまで『勝負できる』という確信までなかなか至れなかった部分が、前年のリオデジャネイロ五輪の前後でトップ選手たちに勝ったり、いい試合ができたことで、『これで勝負できる、勝負していくんだ』と覚悟を決めることができた。すごく時間はかかりましたが、それが17年の爆発につながっていったと思います」
フォアでもバックでも抜群のタイミングと早いテンポでアタックしていけるのが大きな強みだ
Q30 2017年に36位を記録してから18年にはトップ100から陥落、19年には一時274位まで落ちてしまいました。何が起こっていたのでしょうか。
「あまり言いたくはないですが、17年末の手術(胸腔鏡下後縦隔腫瘍摘出術)の影響が出てしまった時期はありました。今も上半身の右半分は汗をかかない状態ですし、かなり痛みがあった時期も長かったので、思うように自分のパフォーマンスを上げることができなかった。メンタル面を含めて、そこでしっかり踏ん張れなかったのは自分自身の課題でもあります」
Q31そこから立て直すことができた理由は?
「いろいろな人に支えられた部分は大きいですね。妻と結婚したということもありましたし、たくさんの人のサポートがあってのことです」
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