レベルアップの必須能力「テニスのスピード」前編「テニスの動きのセオリーを学ぶ」
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USTA(全米テニス協会)のフィジカル部門トップコーチ、大地智(おおち・さとし)氏にポール・ファインがインタビュー。テーマは「Everything You Need to Know about Speed in Tennis(テニスのスピードについて知っておくべきすべてのこと)。前編は、レベルアップの必須能力「テニスのスピード」として、「テニスの動きのセオリーを学ぶ」、「加速」と「減速」、「スピード」のための練習&トレーニング。(2021年4月号テニスマガジン掲載記事)※記事は掲載時のまま
スピード解説◎大地智(全米テニス協会ストレングス&コンディショニング・ヘッドコーチ) インタビュアー◎ポール・ファイン 翻訳◎池田晋 写真◎毛受亮介、BBM、Getty Images
「フェデラーは走っているのではなく、まるでコート中を浮いているかのようだ。彼は別格だ」(グランドスラムを2度達成したレジェンド、ロッド・レーバーの言葉)
「テニスは1000回のスプリントだ」(ずば抜けたコートカバーリング能力の持ち主だった70年代のスーパースター、ビヨン・ボルグの言葉)
「テニスは動きのスポーツです。異なる方向に異なるスピードで動く。エネルギーをセーブするためには“効果的に動く”必要があります」──(大地)
アスリートにとって、テニスにとってのスピードとは
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ノバク・ジョコビッチ
アスリートにとってスピードは死活問題です。ダイナミックなプレーが求められるスポーツでは、最速の、もっとも瞬発力のあるアスリートが幸運をつかみます。
NBAのスーパースターであるヤニス・アデトクンボ(ギリシャ/ミルウォーキー・バックス)が3人のディフェンスの間を抜き去る姿は驚くべきものがあります。また、MLBでは、外野手のムーキー・ベッツ(ロサンゼルス・ドジャース)が猛然とダッシュしてボールに追いつき、信じられないようなファインプレーを見せます。伝説のボクサー、フロイド・メイウェザーJrは目にも止まらぬスピードで相手のパンチをかわし、鋭く自分のパンチを打ち込みます。最高時速41㎞で走るガレス・ベイル(ウェールズ/トットナム)のことを「世界で一番速いサッカー選手」と語ったのは、これまた「世界最速の男」、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)です。自身は最高時速44.7㎞を記録したことがあります。
テニス史上もっとも偉大な3人であるロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチが、稲妻のように速いのは偶然ではありません。彼らは持ち前の素晴らしいスピードを攻守に生かしています。
オフェンス時は相手の力のないショットに対して素早くステップを踏んで近づき、ディフェンス時は相手のパワフルなショットを追いかけてベースライン際、サイドへと疾走します。
それだけではありません。この“ビッグ3”がボールに向かってダッシュして、一瞬で守備的な状況から攻撃に転じる姿は、まるで物理や幾何学の法則に逆らっているかのようです。世界のトップコーチであり、テニスチャンネルの解説者を務めるポール・アナコーンは、ジョコビッチを「史上最高の攻撃的な守備的選手」と表現しています。
ナダルが自身のバックハンド側のアレーのほうへダッシュしてボールに追いつき、方向転換して、今度はフォアハンド側のアレーのさらに外側へと、まるでチーターのように走って、ダウン・ザ・ラインにウィナーを放つ姿は、多くのスポーツファンを魅了しています。
テニス選手の単純なスピードがどれほど驚くべきものであったとしても、それだけではなく、コーディネーション(協調性)、バランス、アジリティー(敏捷性)、柔軟性にも磨きをかけなければ何の役にも立たず、さらにラケットの操作技術、戦術的な想像力があってこそ、生かせるものなのです。さもなければ、スピードは効果的ではなく、無駄になってしまいます。
快速選手で7度のグランドスラム優勝を誇るマッツ・ビランデル(スウェーデン)は、「ボールを打つ技術よりも動き方のほうが間違いなく重要である」と断言しているほどです。
USTAで活躍する大地智氏にインタビュー
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左が大地智氏、右はフランシス・ティアフォー(アメリカ)Photo courtesy of David Ramos, USTA Player Development / Pre match warm up with Francis Tiafoe. 2016 Indian Wells
こうしたテニスのスピードについて、基礎と大事なポイントを学ぶため、私は今回、サトシ・オオチ(大地智)に話を聞きました。彼は日本人ながら全米テニス協会(USTA)のストレングス&コンディショニング・ヘッドコーチを務めています。倫理的でエゴのない素晴らしい仕事ぶりで、2017年USオープン準優勝のマディソン・キーズ、2020年USオープン・ベスト4のジェニファー・ブレイディ、2019年オーストラリアン・オープン・ベスト8のフランシス・ティアフォーを含め、ライリー・オペルカ、トミー・ポール、キャロライン・ドルハイド、クリスティーナ・マクヘイル、キャサリン・ベリスといったアメリカの期待を背負う若手たちを指導してきました。
「テニスは動きのスポーツ。異なる方向に異なるスピードで動く。エネルギーをセーブするためには効果的に動く必要があります」と大地は言います。
今回行った大地に対するインタビューでは、テニスの動きのセオリーと練習方法を掘り下げ、今まで倒したことのない相手に勝つために自分のスピードをアップする方法を聞きました。前編の今回は「テニスの動きのセオリーを学ぶ~加速と減速」をテーマにします。後編の次回は「勝つためのスピードアップ」をお届けする予定です。
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ラファエル・ナダル
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