Dr.マーク・コバクス「リズムが良くなればテニスはうまくなる!」(3)リズムを良くする方法
――リズムを良くするために、壁打ちを推奨しますか?
壁打ちは私たち人間が考え出したトレーニング法の中で、最高のメニューのひとつです。理由は、壁が絶対にミスをしないから。
壁を使って毎日、完璧な練習ができます。壁に向かってどのように打つかによって、違ったバウンドを得ることができます。そこでは様々なスピンの使い方とポジショニングを学ぶことができ、テニスのすべての要素において役立ちます。
壁打ちの大きな利点は、同じ動き、同じストロークを繰り返し練習できる点です。自分のテニスを向上させたいのなら、壁を利用することはとても有益です。
動きがリズミカルになると、
エネルギーをよりスムーズに
効率的に変換 できるようになる
――対戦相手のリズムを崩すのにもっとも良い方法は何ですか?
この質問は、ここまで話してきた内容と異なるものです。ここまではボールを正確に打つ能力と、自分のリズムについて話してきました。
相手のリズムを崩すには、相手が心地良いと感じるゾーンから出させることです。もし相手がクロスに素晴らしいショットを放ち、フォアハンドを中心に組み立てようとしているなら、そのパターンで打たせないように高く弾むボールや低いボールを打ったり、バックハンドにボールを集めるなどして、心地良く感じている場所から移動させることです。心地良くないことをさせられるのが好きな人はいません。
あなたが目指すべきは、相手がもっとも心地良いと感じるパターンやストロークを知り、それを崩し、心地良くないと感じるショットを打たせることです。
相手のリズムを崩すには、相手が心地良いと感じているエリアから追い出す。例えば心地良くフォアハンドを打たせないように、バックハンドにボールを集める(写真はイメージ)
――では、あなたのリズムを崩そうとする相手には、どのように対処したらよいのでしょか?
シンプルなゲームプランに集中することです。もしあなたがクロスに打つのが一番得意なら、クロスに打てるようにプレーすべきです。たとえ相手がダウン・ザ・ラインに返してきたり、低く伸びるスライスを打ってきてもです。
最初のプラン(Aと考えましょう)がまったく機能しなくなるまでは、そのプランAにしがみつくことです。それが勝利への近道になるのです。
特に高いレベルのテニスになると、お互いのレベルがかなり拮抗しているため、プランBはそこでなかなか通用しません。プランAで自分ができる限り最高のプレーをすること。事前に相手のこともできる限り調べておくことも、勝利の可能性を高めてくれます。
相手がリズムを崩そうとしてきたら、あなたは最初のプランにしがみついてプレーすることだ
――“スプリット&バック”のように、スプリットステップをしたらバックスイングをするということを忘れないためのキーワードのようなものが、自分のリズムを良くするためにもありますか?
キーワードを選び、それを心掛けるのはとても大事なことです。特に低いレベルのテニスでは、どのようにボールに対して自分のポジションをとるか、どのようにボールを打つかを判断するときに、忘れないようにすべきポイントがあるからです。相手がボールが打って、自分に向かって飛んでくるときに、タイミングをとるためのヒントがあるのは良いことです。“スプリットステップをしてテークバック”と心の中でつぶやくことは、その瞬間に集中すべき2つのヒントを与えてくれるものです。
より良いリズムでプレーするためには、ヒントやキーワードを持つことはとても有益です。ヒントやキーワードにはいろいろなものがあります。「ヒップターン」「軸足に溜める」「一歩下がる」など、これらはすべて自分のプレーを向上させるためのキーワードです。
〈時間〉がステップを
決断するときの
要素になる
――1、2やイチ、ニ、サン! と数字を使うことはリズムを良くする手助けになりますか?
数字や韻律(音の調子の強弱、高低、長短など)、メトロノームを使うことはすべて同じコンセプトで、タイミングを利用してリズムを向上させようという狙いがあります。それは間違いなく、自分のリズムを良くしてくれ、気持ち良くしてくれるでしょう。そしてポジショニングもかなり良くなるはずです。
しかしながら、あなたの技術が向上するわけではありません。イチ、ニ、サン!とタイミングをとるのは完璧になります。ただ、それと同時にエネルギーを良いタイミングで変換し、運動連鎖を同調させなければ、リズムはオフのままで機能しません。そのようなキーワードを使うことでフットワークの一部、あるいはフットワークのリズムは良くなるかもしれませんが、ストローク自体が向上するわけではありません。
ある技術を最初に身につける段階なら数字を数えることが助けになるかもしれません。しかし、無意識の自信を身につける段階までくれば、一つひとつの動きを意識せずにできるようになる必要があります。イチ、ニ、サン!と考えながら動いているなら、社交ダンサーのようにまだ自然にその動きができるようになったわけではありません。社交ダンスも最初はイチ、ニ、サン、シ!と進みながらステップを身につけますが、動きが良くなれば、より自然にできるようになります。動きがよりリズミカルになるのは、エネルギーをよりスムーズに効率的に変換できるようになってからです。
――テニスのステップの中で、クロスオーバーステップはリズミカルで、シャッフルステップ(細かいサイドステップ)はリズミカルではないという考えは正しいですか?
正しくありません。なぜならリズミカルな動きは、考え得る中でもっとも効率的な動きだからです。
クロスオーバーステップはAからBに動くのにもっとも速いステップになります。しかし大きいステップであるため、地面に対して、より大きな力で踏み込まなければならず、多くのエネルギーが必要になります。
時間がたっぷりあるときは、シャッフルステップも使えます。しかし、速く動こうとするならクロスオーバーステップのほうが良いでしょう。
ステップにはリズミカルなものもあれば、それほどリズミカルではないものもあります。クロスーバーステップよりシャッフルステップのほうが、身体への負担が小さいでしょう。一歩に使うエネルギーは小さくなります。だから多くの人が使うし、適切でもあります。しかし、一歩で長い距離を動けないため、どちらの方法を選ぶかが重要です。
クロスオーバーステップもシャッフルステップも、非常にリズミカルにできるものです。
――あなたはクロスオーバーステップかシャッフルステップか、どちらかを選ぶときに〈時間〉という基準を使いました。しかし、伝統的に多くのコーチはスペース、距離を基準に挙げています。それはつまり、ベースライン上で短い距離を動くとき、またはスマッシュを打つため後方に短い距離を動くときです。つまりクロスオーバーステップは長い距離に最適で、シャッフルステップは短い距離に最適という考えです。
その基準は間違っています。何人かのコーチがそれを話題にしただけで、それが正しいとは言えません。
大きいステップは速く、滞空時間が長くなります。小さいステップは、大きいステップがはまらなかったとき、微調整するときに使われます。小さいステップが不要というわけではありません。どんな場面でなぜ使うのかを頭の中で整理すればいいのです。
つまり〈時間〉こそがカバーできるスペースと距離を指示できます。距離ではなく時間が決断するときの要素になります。
クロスオーバーステップ
シャッフルステップ (細かいサイドステップ)
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