(※原稿は当時のまま)21歳以下のトップ8が世代ナンバーワンを決める「Next Gen ATPファイナルズ」。フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレーの4強を追う若手たちは、いまどんなプレーをして彼らに追いつき、追い越そうとしているのか。2017年大会に出場した8選手のプレーを解説しよう。(2018年1月号掲載記事)

次代のスターはどんなテニスをするのか?

巻頭特集 │ Next Gen ATPファイナルズ 技術編

これがNext Genのプレーだ! 8強激突

取材・文◎木村かや子 構成◎編集部 写真◎Getty Images、毛受亮介
※一部のプレー写真はUSオープン、モントリオール、パリの大会で撮影したものを使用しています。
※世界ランキングは2017年11月13日付

【参考】2020年11月16日付 ATPランキング
ダニール・メドベージェフ(4位)
アンドレイ・ルブレフ(8位)
デニス・シャポバロフ(12位)
カレン・ハチャノフ(20位)
ボルナ・チョリッチ(24位)
チョン・ヒョン(160位)
ジャンルイジ・クインツィ(411位)
ジャレッド・ドナルドソン(734位)

01|Hyeon Chung
チョン・ヒョン
(韓国)21歳




ジョコビッチを模範とする若手随一のオールラウンダー

フォア、バックから
危険が生み出せる


 チョンは、そのオールラウンドな能力、そして安定性で、若手の中で抜きん出ている。無駄なミスのない、堅固かつ力強いグラウンドストロークを誇り、必要な瞬間に、厳しいコースを突きつつ、アグレッシブに打ち込んで相手を走らせる。
フォアハンドからもバックハンドからも危険を生み出せるが、メドベデフが「作戦は、彼のバックにボールを集めること」と言っていることから見て、敵にとってより脅威なのはフォアハンドだ。

 大柄でがっちりした体格のため力負けもせず、同時にフットワークもよいので、無理して走り回っているように見えなくとも、大概のボールにしっかり追いついて、いい体勢で打つことができている。また相手の強打を切り返すカウンターパンチにも長けており、重心が低く体が安定しており、体幹が強いことから、かなり振られて体勢を崩しても、ボールを相手コートにしっかり返すことができる。バランスのいい体をつくるため、韓国では毎日ジムワークを行っている、と言うチョン。

常に集中して
全力を尽くす
姿勢を持つ

 また適切な瞬間を見分ける能力を持ち、本人がより上達したい部分に挙げているネットプレーでも、すでにかなりの巧さを誇る。さらにソフトなタッチのドロップショットや、ドロップボレーでも見事な腕前を見せる彼は、真のオールラウンダーだ。かつてフェデラーやナダルに憧れていたという彼の、今のお手本はジョコビッチ。理由は「精神的に強く、ベースラインで優秀かつ堅固な、オールラウンドプレーヤーだから」だと言う。

「すべてをうまくやらなければならないから、メンタル的にも、技術的にも向上する必要があるし、肉体的にもより強くならなければいけない」と言うチョン。常に集中して全力を尽くす姿勢を持ち、カッとなりやすい若手が多い中、精神的にもかなり堅固なほうだが、まだプレッシャーがかかるとナーバスになるところがあるため、「何があろうと落ち着きを保つこと」をモットーに、心理学者の指導も受けている。



プロフィール
生年月日 1996年5月19日生まれ(21歳)
身長/体重 188cm/87kg
利き手/バックハンド 右利き/両手打ち
世界ランキング 54位(キャリア最高44位)
出生地/居住地 韓国・水原市(スウォン)

 幼少の頃から目が悪かったため、視力回復を目指す意味も含め、テニスを始めたと伝えられている。子供の頃から眼鏡をかけてプレーしていたため、ついたあだ名は『プロフェッサー(教授)』。

 2008年に12歳以下のオレンジボウルで優勝し、それに続き、兄のチョン・ホンとともに、フロリダのボロテリー・アカデミーに短期テニス留学をした。2013年にはウインブルドン・ジュニアで準優勝。決勝では、今回破ったイタリアのジャンルイジ・クインツィに敗れたが、本人はそのときのことを「ジュニア時代に至った最初の決勝で、グランドスラム大会のトロフィーを勝ち獲ったことが、ただただうれしかった」と思い出す。

 2015年に初めてシニアでグランドスラムに出場し、同年、ATPの『もっとも上達した選手』に選ばれた。彼は2017年を、「多くのいい出来事があった。グランドスラムで初めて3回戦に進出し、そこでケイ(錦織圭)とプレーした。ATP250で初めて準決勝に進出した」と振り返る。チョンはフレンチ・オープンで錦織を5セットの戦いに追い込む前にサム・クエリー(アメリカ)を倒し、8月のロジャーズ・カップでは、ダビド・ゴファン(ベルギー)を下した。

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