ボブ・ブレット_日本のコーチの質問に答えます




正々堂々と自分を表現する。
それが自信を生むのだ。

Q10 コーチを目指している学生です。コーチになるためには選手としての経験もある程度、必要だと思って努力していますが、でも自分は今、壁にぶつかっていて自信が持てません。海外のキャンプを見て思いますが、なぜ外人はあんなに自信を持っているのでしょうか? [男性]

A そのように考えることはとても大切なことだと思うが、自信を得たかったらチャレンジするしかない。もしも、あまりにも考えすぎてしまって一歩が踏み出せなくなっているとしたら、それは失敗を恐れてしまっているということ。そんな状況では試合に勝てるわけがない。試合に負けたとき、それは負けを望んでチャレンジした結果ではないだろう。正々堂々と自分の持っているものを表現したら、それでよいのではないか。そういう気持ちで望むうち自分というものが見えてくるのであって、そのチャレンジを続けるから結果がついてくるのだろう。

 何より誰もが毎回、試合で勝っているわけではない。負けた人でも、何度もトライする。そこには自分を見つけ出そうとする気持ちがあるからトライするのであって、見つけられるのであり、そこに自然に自信は生まれるのだ。自信はどうやって作るのだろうと考えて、パッと与えられるものではない。

 自分が思うことを悪い方へと考えないで、例えば相手にこうしてもらったら自分はうれしい、自分がこうしたらあの人に喜ばれるというような普通のことをやってみたらどうだろう。そうしていると、そのことは時間が経つにつれてあなたの中では当たり前のことになっていくだろうし、そういう気持ちから自信は生まれると思う。何もアメリカ人の真似をする必要はない。結果にとらわれず、あなた自身を表現するところからスタートしたらよいのではないか。やり続ければいつか形になるだろう。

 私はコーチングが好きでやり続けているうち、ここ数年でやっと本当に自分に自信が持てるようになった。でも、これまで本当は怖い気持ちがあった。なのに周りの人はあなたは強い人だと言っていた。そう言われたのはおそらく、私が怖いと思ってもやめるタイプの人間ではなかったからだろう。怖くても自分でトライし続けるだけの、チャレンジの気持ちが強かったから道を築けたのではないだろうか。そういう気持ちでがんばってきたつもりだ。

Q11 マリオ・アンチッチとの関係ですが、マリオがボブさんにコーチングを頼んだのですか?それともボブさんがマリオに声をかけたのでしょうか? また彼はどんな選手ですか? [男性コーチ]


マリオ・アンチッチ(クロアチア)

A マリオが14歳のとき、彼の将来を見越していたナイキからIMG(マネージメント会社)を通して見てほしいという話があった。そのときはお金をもらうわけではなく自分に時間があるときに教えていただけだった。たた彼に対しては、私は最初にお話ししたような「特別な何か」を感じたのである。

 マリオは私の言ったことをすぐに吸収できる能力を持っていた。また、いつも何かに向かってチャレンジしたいという気持ちを持っていた。そこから始まり、年間10週間くらいを私が教え、そのほかの時間は彼のお兄さんがいっしょにプレーした。15、16歳とそういう時間を過ごして、現在がある。

 彼には「特別な何か」がある。彼は私をいつもsurprise=サプライズ、びっくりさせるのだ。私がマリオに対して設定したゴールを、彼はことごとく破ってしまった。例えば99年のグランドスラム・ジュニアは、私はマリオが予選をクリアできればいいと考えていたが、彼はその予想をはるかに越えて本戦ストレート・インできるランキングまで自分を持ち上げた。

 そして2000年のグランドスラム・ジュニアは、準々決勝まで行ければよしとした私の中のゴールを、年頭のオーストラリアン・オープン・ジュニアで早々に破って、アンディ・ロディックと決勝を戦った(結果は準優勝)。彼は私が思うところよりも常に上に行く。それがいっしょに仕事をしていてすごくおもしろいところである。2001年は250~300位ぐらいまで行くのではないかと私は自分の中にゴール設定していたのたが、すでに306位まで上がっている(2002年2月4日付のランキングは288位/アンチッチは最終的に2006年に自己最高7位に到達)。

Q12 ジュニアの年代はどのくらい試合をするべきと考えますか?ブランを立てる上での目安を教えてください。[男性コーチ]

A ジュニアのトーナメントを考えるとき、もっとも大切なのはバランスだと思う。どのくらいのレベルのトーナメントに出るか、何大会ぐらい出るか。私はたくさんプレーする必要はないと思うが、必要な大会には出るべきだと思う。それは個々に違うものである。

 基本的な考え方として、小さな頃(12歳くらい)に海外に出る経険はとても大切である。海外に出ることで、海外で戦うということがどういうことか感じることができるし、その雰囲気を味わうこともできる。女の子で上手な子供であれば10、11歳でも十分雰囲気を感じられると思うが、ただし両親と旅する必要がある。女の子の場合、その年代は両親が責任を持つことが必要になると思う。しかし男の子は違って、自分が何をしなければいけないかを考えさせるテストをしなければいけない。例えば、自分よりもうまい子供とやらせたりすることである。

 私のパリのキャンプにはすごくいい女子プレーヤーがいる。まだ13歳になったばかりだが、18歳以下のトーナメントにも出ているし、もちろんそれ以下の年代のトーナメントにも出ている。要するにトライする大会と勝てる大会をミックスしているのだ。そこで彼女がどのように感じ、どのようなコンビネーションで、どのような戦い方をするかテストするのだ。そのテストによって、ひとつ上の段階でプレーさせてもよいかどうかを見ることができる。もしも準備ができていないようなら元の段階に戻せばいいのだ。

 ヨーロッパ、特にドイツやフランスは12歳の子供を対象に卜ーナメントを年間25大会くらい実施している。金曜、土曜、日曜の3日間トーナメントというものもたくさんある。私としては年間15~18トーナメントがよいのではないかと思う。夏休みなどはたくさんのトーナメントがあるものだ。

 それでも基本的に私は、子供は学校に行くこと、友達と会うこと、そういうノーマルライフを過ごすことがすごく必要なことだと思っている。だからマリオも今の生活の中でも学校に行っている。彼は学校に行くことによってエンジョイできるし、テニスにも集中できるのだ。

Q13 (12に続いて)日本の子供は学校のテストなどがあって2ヵ月くらい試合できない時間がありますが、そのときのよい方法はあるでしょうか? [男性コーチ]

A むずかしい状況なら、どうにかしてうまい方法を探してバランスをとるしかないだろう。私はその環境が絶対にいい選手を育てられないと考えたりはしない。いろいろと困難はあるかもしれないが、どうにかして努力して打ち破らないといけないのではないか。それもある意味でバランスをとるということだと思う。

 テスト期間はあるかもしれないが、その代わり夏休みは長いだろう。ならば海外に行くチャンスとも言えるはずだ。3~5週間、海外に行ってみたらいい。8月には各地でたくさんのトーナメントが行われているので、スケジュールを考えて出掛けてみたらどうだろう。いろいろな選手がいることを肌で感じることができると思う。

Q14 (Q13に続いて)8月には日本で一番大きな全日本ジュニアという大会があります。長い夏休みの真ん中にこの大会がありますが、ボブさんならどう考えますか? [男性コーチ]

A 将来に大きな夢を描いているのであれば、それをスキップしてでも行くべきときはあると思う。

Q15 アンドレ・アガシやピート・サンプラスなどのトップ選手は現在、シングルスだけしかプレーしていません。そういうこともあってか、ほとんどの子供たちがダフルスを軽視しているような傾向が見えます。ポプさんはダブルスをどのようにとらえていますか? [男性コーチ]

A 私はダブルスはすごく大切だと考えている。なぜなら、たくさんの試合がてきる。シングルスで負けたあとでも試合ができるのだ。そこではいろいろなことがテストできるし、自分のテニスのレべルアップもできる。サーブ&ボレーにトライするのもいいだろう。

 私はアガシもサンプラスもダブルスをプレーしないのはミステイクではないかと思っている。ただし彼らはジュニアのときはダブルスをプレーしていた。今でもときどきはプレーしているのだが。

 トップ選手がダブルスに出場しない理由は、ATPツアーのダブルスのスケジュールの問題がある。ダブルスはどうしても夜遅くプレーしなければならない傾向があり、ときに真夜中になることもある。そうするとシングルスに集中したいプレーヤーにとって、ダブルスは負担が大きくなる。だからあまりプレーしたがらないのだ。

 マリオの場合は、特別なときを除いてほとんどの場合、ダプルスをプレーしている。彼は現在、ATPのダブルス・ランキングが380位ぐらいだが、これからランキングが上がっていけば強い選手と組むこともできるし、そのときワイルドカードをもらうこともできる。これまでゴラン(・イハニセビッチ)とプレーしたこともあったし、1年半ほど前にはリチャード・クライチェクとプレーする機会もあった。2000年のUSオープンでは、サンプラスがいっしょに練習しないかとマリオに言った。

 ダブルスでも、あるいは練習でも、選手に自分より上の選手と一度でもプレーさせておくと、一度はプレーしたことによって次からは怖がる必要がなくなる。そういう状況を選手のために探すことは、たいへんではあるがコーチの仕事のひとつだと思う。


修造チャレンジ・トップジュニアキャンプ Aチームの中原健一郎君


(当時のママ)現在、ボブが指導するマリオ・アンチッチは1984年3月30日、クロアチア生まれの17歳。身長193cm、体重81kg。右利き。彼はまだジュニアの年齢(17歳)だが、すでにATPランキングを288位まで上げ、母国クロアチアではエースのゴラン・イバニセビッチから数えて6番目につける実力者

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