内山靖崇「50の質問」ツアー再開後のトップ50入りは十分にチャンスがある|Player File 2
「トップ100に入って、うれしい以上にホッとした」
――その19年は飛躍の年になりましたが、何かきっかけはあったのでしょうか。
内山 自分がいいプレーをすればトップにも勝てるという自信がついたことです。100位に入るには、100位以内の選手に勝てる実力がなければならない。チャレンジャーで戦っているときも、その先のツアーを見据えながらプレーできるようになったことで余裕が生まれて勢いがついていきました。さらに楽天ジャパンオープンでは、苦しくてもはね返す力がついていると実感できて、勢いだけではない自信につながった。それがその後のチャレンジャーでの優勝、準優勝にもつながりました。みんな僕がジャパンオープンでベスト8に入ったのを知っていましたし、相手の目の色も以前と違っていたので。僕も逆だったら、結果を出している選手とは当たって砕けろという気持ちでいくと思う。それをはね返して勝てたというのは、本当の実力がついてきたと感じられました。
――自信の積み重ねが好循環を生んだのですね。
内山 シーズンの前半で勢いがついて、後半はその勢いだけじゃなくプラスαでという感じでしたね。
――その中で19年は初めてトップ100を切りました。
内山 うれしい気持ち以上にホッとしました。プロになって100位を切ることは一番大きな目標でしたし、プロ9年間の中でその道筋が見えなくなったときもありましたから。
――ウインブルドンで本戦初出場を決めたときの気持ちはどうでしたか。
内山 それも一緒です(笑)。うれしいというよりは、よかったなと。一度も予選を突破できずに、グランドスラムのシングルス本戦でプレーできずにキャリアを終えるということがなくなった、とホッとしましたね。
――19年のブレークまで苦しい時期も長かったですが、一番きつかったことは何ですか。
内山 やっぱり「ダブルスに専念しろ」という声が大きくなったときに、きついというか、「何もわかってないな」と思いながら、一生懸命シングルスを戦っていました。
――どうやってその時期を乗り越えたのでしょうか。
内山 コーチの増田健太郎さんや鈴木貴男さん、デ杯監督でもある岩渕聡さんなど、僕の本当に身近な人たちは一切そうしたことを言わなかった。岩渕さんは現役時代、AIGジャパンオープンのダブルスで優勝して僕と同じような立場になったと思いますが、「ダブルスに絞らなくていいよ」と言ってくれましたし、健太郎さんは「ここでダブルスに切り替える必要はまったくない」と言い切ってくれたので、そうした考えを持たずにやっていくことができました。
――「ダブルスに専念しろ」という声は反骨精神につながりましたか。
内山 僕はあまり反骨精神をエネルギーにするタイプじゃないんですけど、そんな僕でも反骨精神につながるくらい(笑)。だから一時期はチャレンジャーでもダブルスに出ていませんでした。ただ、デ杯ではダブルスで力を発揮することが求められていると思うので、頑張りたいです。
――ダブルスをプレーするのは嫌いなわけではないですよね。
内山 むしろ楽しいし、好きです。でも、例えば2018年のウインブルドンではダブルスで予選を突破したんですけど、19年のウインブルドンのシングルスで予選を突破したときのほうが圧倒的にうれしかった。だから、ダブルスに専念してツアーを回るというのは違うかな、と思います。
――ダブルスをプレーすることでシングルスにいい影響はありましたか。
内山 ネットプレーやサービスの配球、リターンといった駆け引きの部分ではシングルス以上にダブルスはシビアになってくる。ラリーが少なくなるので、ショットの選択も重要です。そういう意味ではすごく役に立っています。
取材・構成◎杉浦多夢
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