レシーブ力を下げるサービスのバラエティと騙し

10レシーブ力を下げるサービス
スコアやポイントの重要性によってサービスのパターンをミックスする

 野球のピッチャーがカウントごとにパターンを変えることも、相手を惑わすひとつの手法と言える。これが誰よりも得意なのがフェデラーだ。40-0のとき、彼は“このポイントは重要じゃない”と判断して、ほとんど自分の得意なサービスを打たない。そんなとき、フェデラーはボディへサービスを打って、さらに相手を惑わすこともある。

 大事なポイントを迎えたとき、このクレバーなスイス人は、チェスをプレーしているかのように、ひとつ先の手まで考えてプレーしている。例えば、デュースコートで相手のフォアハンドにいくことを気にせず、鋭いスライスサービスを打つ。レシーバーが、これをダウン・ザ・ラインに打ち返してフェデラーにバックハンドを打たせることは、あまりにリスキーであると判断することを予想しているのだ。そして、フェデラーは素早く左に1歩か2歩ステップして、パワフルなフォアハンドでラリーを支配、あるいはインサイドアウトの強烈なフォアでウィナーを奪う(写真)。

フェデラーのデュースサイドからのサービス+フォアハンド
フェデラーは、ひとつ先の手まで考えてプレーしている。デュースサイドでは相手のフォアハンドにサービスがいくことを気にせず、鋭いスライスサービスを打ち、これをレシーバーがダウン・ザ・ラインに打ち返すことを予想している。素早く左に1、2歩ステップして、インサイドアウトの強烈なフォアでウィナーを奪う。

 左利きのナダルの場合は、アドコードで相手のバックへサービスを打つとき、フェデラーと同じような破壊力抜群のワンツーパンチを見舞うことが多い。

左利きのナダルのアドコードからのサービス+フォアハンド
左利きのナダルは相手のバック側(サイド側)へサービスを打つとき、フェデラーと同じような破壊力抜群のワンツーパンチ(サービス+フォアハンド)を見舞うことが多い。

 フェデラーは、相手が自分のサービスのパターンを読んできたと思ったとき、即座に変える。「ロジャーの隠れた才能のひとつは、相手が何を予想し、何を考えているのかを絶えず予測できることだ」とATPワールドツアーの筆頭アナリストであるクレイグ・オーシャネシーは『Fedegraphica』の中で語っている。

「ほとんどの選手は自分のストロークにフォーカスすればよいと思っており、“すべては自分次第”だと信じている。だが、実際は違う。テニスコートでもっとも大事なのは、ネットの向こう側にいる相手である。彼らの頭の中に入り込んで、何を考えているか、探り当てるのだ」

 それができたら、サービスの種類をミックスして、状況に応じて自分の狙いを相手から隠すことだ。そして継続して試合、あるいはセットの中で自分が一番よくできているプレーがどれなのかを評価する。さらに重要なのは、相手が自分のどのサービスに対してもっとも苦戦しているのかを判断することだ。

 かの有名なコーチ、ビック・ブレーデンのアドバイスに従うといいだろう。

 「基本原理は、高く弾む、弱いリターンを誘発するようなサービスを常に打てばいい」

 この探り合いの勝負に勝ち、自分のサービスに新たな何か(深みや広がり)を身につければ、より多くの試合に勝つことができ、自分が想像していた以上にテニスを楽しむことができるだろう。

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