錦織圭_世界をリードする超攻撃的テニス
「勝てない相手ももういない」…と言ったあの日からそれを実現した現在まで錦織圭の進化のスピードは凄まじいものがある。2016年は世界5位でフィニッシュ。自己最多の58勝(21敗)の戦績を残した。トップ4を脅かす筆頭となり、その超攻撃的テニスは今、次代のプレーヤーが目指すスタイルになっている。錦織が世界のテニスを動かしているのだ。ここでは6人の専門家に2016年の錦織が進化した点を解説してもらう。【2017年2月号掲載記事|技術特集】
解説◎増田健太郎(マスケン・テニス・サポート代表)/丸山淳一(森田あゆみプロ専属コーチ)/
高田 充(JOCアシスタントナショナルコーチ)/堀内昌一(亜細亜大学教授 / テニス部監督)
写真◎小山真司、毛受亮介、菅原 淳、Getty Images
「 ミスが減り、プレーが安定した 」
── 増田健太郎
錦織選手にたまたま「自分でどこが進化したと思う?」と聞いたあとで、僕がこの質問を受けることになりました。錦織選手から返ってきた答えは「安定」です。体のぐらつきがなくなり、安定してボールが打てるようになったことでミスが減ったと言います。
確かにそれを感じます。錦織選手のテニスは高い集中力が求められるもので、それが、ある一定ラインを越えると切れてしまうところが以前はありました。一度切れてしまうとプレーの鋭さが消え、やや“暴走”してしまうところも見られたのですが、それが今年は、一つ一つのショットが高いレベルで安定していきました。
「 球際に強さが光る 」
── 堀内昌一
下半身の強さが目に見えてわかります。広いスタンス、バランスのよさ、体幹の強さ。球際での返球は力強く、ライジングは死んだボールではありません。ボレーやスライスを選択したときもバランスが崩れず、力強い返球とともにリカバリーも素早いです。
「 ドロップショットが上達 」
── 増田健太郎
錦織選手自身は「閃き」や「直感」で打っていると言うのですが、ドロップショットを使うタイミング、ショットの精度がとてもよくなり、使うべきときに使えています。以前は大事なところで、やってしまった、という感じのものもありましたが、今はありません。
トップ選手として、周囲にその強打を研究されるようになり、拾いまくるしつこい相手が出てきました。その相手に対してドロップショットの選択肢は追加的に走らせることができ、とても効果があります。前述の「安定」があり、ドロップショットが、より活きています。
※ネットの向こうはマレー。フォアハンドの強打の構えを見せてマレーの動きをベースライン後方に止め、その後、ドロップショットに切り替え、完全に動きの逆をついている
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