錦織圭_世界をリードする超攻撃的テニス

「3球目攻撃が攻略され、5球目攻撃でも主導権を握り続けられるように 」
── 丸山淳一

 昨年や今年の中盤に錦織選手のサービスゲームで、ワウリンカ、ツォンガ、ガスケがポジションを後ろに下げて時間をつくり、タイミングを外してくるケースがありました。錦織選手はサービス、リターンのあとの3球目で、相手の時間を奪いながらの速いタイミングとスピードで、一気に優位な展開をすることを理想としています。それに対してレシーバー側がベースライン後方へ2、3m下がって深いリターンをすることによって錦織選手は時間をつくられてしまい、対処するための正解を導き出せないままラリーをさせられているシーンを何度も見ました。時間をつくることによって相手は余裕を持ってコートカバーリングをし、錦織選手はタイミングを外された中で強引な攻めを強いられました。

 錦織選手が凄いのは同じ失敗は繰り返さないところです。今度は3球目で無理に攻撃することをやめ、時間と空間をうまく使って、さらに相手の読みやタイミングを外す数種類のショットバリエーションを身につけました。それが今年の中盤以降で進化した点だと思います。

 相手が時間をつくってくるなら無理に打ち込まず、ネットの高いところを通すような、スピンの効いた深いボールを多用しました。相手は時間的な余裕を得たことでチャンスが来たと錯覚し、中途半端な攻撃をしてしまい錦織選手のカウンターの餌食となっていきます。相手は錦織選手が焦って打ち込んでくるのを待ち、カウンターを狙おうと深い位置からベースライン近くに戻っていたところで、錦織選手にループ気味の深いショットを打たれ、タイミングを外されることによってミスを増やされたり、難しい攻撃をするハメになってしまいます。

 その結果、今度は相手が下がりながら打つことが増えました。下がりながらのショットセレクションにも迷いが出て返球は甘くなり、錦織選手はバックハンドのダウン・ザ・ライン、あるいはフォアハンドに回り込んで逆クロスでふたたび優位性を取り戻します。いわゆる5球目攻撃です。このパターンはかなり確立されました。

錦織選手(左)が前に入って強打してくると予想し、べースライン付近で待っていたワウリンカ(右)だが、錦織選手のループ気味のボールに対して下がりながら打つことになる

ワウリンカのボールが浅くなり、錦織選手はベースライン付近までポジションを上げて攻撃

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