錦織圭_世界をリードする超攻撃的テニス

「完璧すぎる打球前姿勢、これで相手は身動きがとれない 」
── 堀内昌一

 ただの技術ではない、戦術的技術が完成されたと言ってもいいでしょう。左手をラケットに添え、体幹を十分にひねっているこの左写真。ラケットは立てて、グリップは身体に近く、グリップエンドに重心があります。ラケットヘッドに力感がありません。上体はリラックスしていて、何よりも右手がグリップを微かに握っている程度ですから、ドロップショットを打つ際のグリップチェンジも可能です。

 下半身はスタンスが広く、軸足の右足を深く曲げ、地面を踏みしめて力がみなぎっています。完全な下半身始動です。アドレスもどのコースにも打ち分けることができるボールとの距離感となっています。見たとおり全体のバランスがよく、打球後にも次の動作に素早く移れるに違いありません。

 錦織選手に打球前にこのような完璧な姿勢で身構えられたら、相手はどこにボールがくるのか、左右なのか前後なのか予測がたてられず、まったく身動きがとれません。しかも相手から錦織選手のラケットは身体に隠れてよく見えないはずです。つまり何をしてくるか相手はまったくわからないのです。

 錦織選手は相手の技術、戦術を読む力、予測力が誰よりも高い選手ですが、このワンシーンからはさらに、相手に自分の技術や戦術を予測させない力もあることがわかります。

ネットの向こうはマレー。錦織選手がこのフォアハンドの構えをつくり「間」をとると…

錦織選手はダウン・ザ・ラインにフォアハンドを打ったが、マレーは最後まで動けなかった

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