錦織圭_世界をリードする超攻撃的テニス

「 ショットの精度が上がり、連携プレーに相乗効果 」
── 高田充

 相手の脅威となっているのがバックハンドクロスの精度だと思います。このショットからの展開が強く、そうすると次にフォアハンドに回り込んだインサイドアウトやバックハンドのダウン・ザ・ラインで相手を追い込むシーンが多く見られました。それとともに、ベースライン付近でのプレーのレベルアップも顕著です。サービス後の3球目のタイミングのよさ、コート内側に入ったプレーが増えて相手から時間を奪っています。

 この前述したバックハンドクロスやコート内側のプレーレベルが上がったことと関係して、ネットアタックの回数も増し、ネットプレーに磨きがかかりました。以前あったネットでのボレーミスが減り、精度が上がっています。サーブ&ボレーもトライしています。

ライジングは死んだボールではなく、力強く返球

「 超攻撃的テニスが世界をリードしている 」
── 堀内昌一

 進化したというより、させられたという印象です。それは、とてつもない大きな負荷がかかる世界にあの小さな体で入っていって、より深い戦術的なサービスを打たれたり、より長い試合を強いられたり、よりタフなショットを打たされたり、決まるショットも決まらず、弱点も狙われたり、そうこうしている中で錦織選手は全部を吸収して大きなプレーヤーになっていきました。そもそも情報処理能力が高い選手ですから、トップ選手との対戦から必要な栄養をどんどん吸い取っていったように感じます。

 トップ10の中でもっとも背が低く(178cm)、彼ら以上に体力があるわけではないでしょう。その中で彼らに勝つためにはどうすればいいかと探す中、超攻撃的なテニスをしていくしか道はないと、それを貫いているところが一番の凄さだと思います。

 全仏オープン4回戦は雨の中、ガスケと対戦しました。第4セットはもうふらふらで、崖っぷちの場面において、ダウン・ザ・ラインにエースをがんがん狙っていきました。僕はその負け方が凄く印象的で忘れられません。最後まで自分の一番の得意を貫く、自分の強みで勝負していくんだという強い意志がありました。マレーに逆転勝ちしたUSオープンでも、最後まで突破口を探し続け、どんなチャンスも見逃さないという姿勢を見せました。そういう取り組みは今後も変わらないと思いますので、そうするともっともっと強くなるでしょう。

 トップ2のマレーとジョコビッチは相手のテニスを吸収していくスタイルで、相手が負けていくように仕向けるテニス。彼らがそのテニスを今から超攻撃テニスに変えるということは、失うものが大きく、考えづらいことです。とすると、錦織選手の超攻撃テニスがいまなお発展途上と考えると、彼らはどうやって錦織選手と戦っていく気でしょうか。それを見るのが今から楽しみです。そして、おそらく次の世代はマレーとジョコビッチのテニスに錦織選手のテニスをプラスしたスタイルを目指してきます。間違いなく、錦織選手が世界のテニスをリードしています。

ボレーの場面でも同様に、錦織選手の構えはどこへでもコースを変えられる状況にあり、相手のマレーはオープンスペースへ走り出すも、もしも逆を突かれたら、この時点ではもはや戻れない状況

マレーはどこにボールがくるか読めずに動きが止まる

 

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

Pick up

Ranking of articles