竹内映二コーチ_スピン大研究_②スピンを打つ〜ラケット面の角度がボールの行方を決定する!【記事&動画】

みなさんはどうやってトップスピンを打っていますか? 「下から上に擦り上げる」「ボールのトップを擦る」「素早く振り抜く」…など、さまざまな声が聞こえてきそうです。実際は、どのようにトップスピンを打つのか、見て、知って、学んで、レベルアップに役立ててください。(テニスマガジン2019年9月号_巻頭特集「スピン大研究」PART2 記事&動画)



解説◎竹内映二

たけうち・えいじ●1959年5月13日、京都市生まれ。父・醸治が創設した四宮テニスクラブで10歳からテニスを始め、77年インターハイ単優勝。アメリカのシュライナー・ジュニア大学に留学後、プロ転向し、日本人が海外ツアーを回る草分けとなる。元デビスカップ日本代表。82、86年全日本室内複優勝、86年全日本室内単準優勝、86、87年全日本複優勝、87年全日本単準優勝。2001年から兵庫県芦屋市に「竹内庭球研究所」を設立、選手指導にあたる。元デ杯代表監督、元日本テニス協会強化副本部長

構成◎編集部 写真◎牛島寿人 モデル◎小原龍二 取材協力◎ブルボンビーンズドーム


スピンは、ボールに接触したときの ラケット面の角度がすべてである

 トップスピンを打つ前に、まずボールとラケットの接触時間の話から始めましょう。ボールとラケットが接触している時間は、わずか1000分の3秒から5秒です。ボールはラケット面に当たった瞬間、すぐにラケットから離れていきます。ということは、ボールがストリングと接触したときに、何かボールに変化を与えよう、というのは不可能だということです。

 トップスピンを打とうとしてボールの上をこするとか、サービスのときにボールをつかんで曲げようとか、そのような時間もありません。ボールに影響を与えられるのは「ラケット面の角度」だけで、その角度が物理的にボールの行方を決定づけます。ですから、ラケット面がどのような角度でボールに接触するかが非常に重要で、それによってボールの回転と飛ぶ方向が決まります。

CHECK1
ラケットヘッドをボールの下に入れて トップスピンを打つ

 ここからはトップスピンを考えていきます。一連の速いスイングの中で、ラケットヘッドをボールの下へ入れて、下から上へ動かすことでトップスピンを打っています。

 トップスピンを武器とするナダルは、ラケットとボールの高低差を大きくしてヘビートップスピンを打ちます(参考写真)。ただし、常に高低差をつけているかというとそうでもなく、通常は手首の高さとボールの高さはあまり変わりません。トップスピンを強く打ちたいときに、ボールの下にラケットヘッドを落として、下から上へラケット面が上がっていく角度をつけるのです。

 ラケットヘッドをボールの下に落とす動作は、下半身、膝の曲げで導きます。ですからコーチたちは「トップスピンは手で打たず、足で打つように」と言うことがあります。

CHECK2
トップスピンを打つには スイングの加速が必要

 トップスピンを打つには、ボールに対して中心よりやや下あたりからラケット面が入り、垂直にボールに接触していきます。多くの場合、トップスピンは上に飛ばしたいわけですから、インパクト直前でラケット面は少し上向きに動いて、上がっていきます。そうすると落ちてくるボールの下に入って、下から上へとラケット面が動いて、トップスピンが打てます。

 バウンド後、上がってくる勢いがあるボールに対してトップスピンを打つときは、ラケット面をただ出して当てて返すだけだと、垂直のラケット面にボールが当たって跳ね返るときに順回転(トップスピン)が逆回転(アンダースピン)に変わります。みなさんがそのとき、アンダースピンではなくトップスピンが打ちたいのであれば、ラケット面を下から上へ出す必要があります。

CHECK3
トップスピンを打つ連続写真の ラケットを消してみた!

 トップスピンを打っている小原コーチの連続写真を見てください。上段と下段はどちらも同じ写真です。上段はあえてラケットを消してみました。すると、動きはこんなにも「シンプル」であることがわかります。

 一方、ラケットが写っている写真のほうは、ラケットの動きに目がいき、全体のスイング軌道がナイキのスウッシュマークのように見えます。しかしもう一度ラケットを消したほうの写真を見ると、腕は地面に対してほぼ水平に動いているだけです。



 このような回転運動の中でトップスピンを打つには、インパクト直前に手がボールの下に入るように、手とボールに高低差をつけて、面が下から上へ移動するようにします。そこで、これらを一連の運動で行うヒントです。身体の回転運動を優先させて、胸を先に前に向けるようにします。そして打球方向へ腕を伸ばすようにすると、手首が遅れて出てきてトップスピンの位置(ボールの少し下)に入りやすくなります。面が下から上へ移動するとトップスピンが打てます。

CHECK4
インパクト直前の 手の動きを見てみよう

 トップスピンの手の動きを確認しましょう。メディシンボールをインパクトと仮定し、インパクト直前から直後の手の動きをやってみます。実際には、これぐらいの少しの動きです。手がボールの少し下から上へ、前方向へほんの少し動く程度。フォアもバックも同じです。

 トップスピンといえば、ラケットがボールに対して急な角度で動くと思っている人は多いのではないでしょうか。ところが実際には、フェデラーを見ても(参考写真)、みなさんが思うほど手は下から上へ動いてはいません。ラケット面(手首)が下から上へ上がる動きは、ほぼボールを打つ直前だけです。それがトップスピンを生んでいます。





やり方◎メディシンボールをインパクトと見立てて、手首が“負けている感じ”で当てていく。ボールの少し下から入れて上へ、前方向へ、手首が負けた状態で動かしてトップスピンを打つ。


トップスピンのインパクト直後、 ラケットはまだ身体の右側にある

 トップスピンはインパクトまでのラケット面の移動で打っており、そうするとインパクト直後のラケットは下から上へ、前方向へ動いている最中です。まだ身体の右側にあることになります。ボールが相手コートへ向かってだいぶ飛んだ頃に、ラケットは減速動作(フォロースルー)に入り、身体の左側にきます。ラケットが身体の左側に早くくる人は、小手先でスピンをかけているかもしれません。

CHECK5
トップスピンのスイング方向は 下から上、前方向へ直線上の動作

 トップスピンが前にあまり飛ばない、パワーが出ないという人は、ボールを手先でこすっているだけかもしれません。そういう人はインパクト直後のラケットが、身体の左側の低い場所にあるのではありませんか?

 正しいトップスピンは、(右利きの場合)身体の右側で直線上の動作の中で、手首が下から上へ、前方向へ移動するときに打ち出すことができ、そうすると、この右ページの下にある写真のように、インパクト直後はラケットがまだ身体の右側にある状態です。このときトップスピンがかかったボールは、すでに相手コートへ向かって飛んでいる最中。つまりフォアハンドのトップスピンは、身体の右側でほぼ完結します。フォロースルーでラケットが身体の左側にくるのはスイングの減速動作です。

ドリル | ネットを使いラケットでボールを挟み、トップスピンを打ってみよう!




ワンポイントアドバイス| 小指、薬指をストリングのようにボールの後ろに引っかける




 写真のようにボールを見て、イメージ的には直線上でボールの真後ろ、少し下から上へ、ラケット面を垂直に動かすときにトップスピンがかかります。ラケット面を少し上向きに使うときはロブなどです。

 小指、薬指をストリングのように、ボールの後ろに引っかけてみてください。ボールをとらえているという感覚が強くあると思います。これは非常に有効です。もしもこのとき親指と中指のほうが勝ってしまうと、ボールをこするだけとなり、ろくなことはありません。このインパクト直前の下から上への動き、面の移動でボールは上へ上がるのです。小指、薬指ではなく、人差し指、親指でボールのトップを打つと、ボールは下へ飛んでしまいます。

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