堀内昌一先生の「レシーブ力を下げるサービスドリル [ゲーム編] 」【本誌連動記事&動画】

この特集は、サービスの基本「ナチュラルスピンサービス(自然な回転がかかったサービス)」の技術(打法)を覚えるためのドリル「超基礎編|サービスドリル50種類」(2020年9月号記事&動画)に続くものです。サービスの本来の目的であるポイント獲得、サービスキープにつながる練習「ゲーム編|サービスドリル8種類」を紹介します。



指導◎堀内昌一

ほりうち・しょういち◎1960年2月1日、東京都生まれ。亜細亜大学教授、テニス部監督。選手時代に83年ユニバーシアード出場。85、86年ジャパンオープン出場も果たした。現在は、学生の育成・強化はもちろんのこと、テニス界全体の普及・強化にも尽力。日本テニス協会公認マスターコーチとして指導者養成に携わる。主な著書は本誌連載をまとめた『テニス丸ごと一冊戦略と戦術①戦術を考えるために必要な基礎知識』『同パート②サービスキープは勝つための絶対条件』『同パート③ゲームの最終局面、ポイント獲得!』がある。また『テニス丸ごと一冊サービス』(書籍)と『テニス丸ごとサービス』(DVD)も好評発売中。

アシスタント◎熊坂拓哉(右)、堀内竜輔(ともに亜細亜大学テニス部4年)

写真◎井出秀人、菅原 淳  イラスト◎サキ大地 取材協力◎亜細亜大学日の出テニスコート




練習を始める前に、どうしても話しておきたいことがある!
サービスを「知る」「修正する」

前回紹介した「サービスドリル50」はクローズドスキル(状況が変化しない中で行うもの)で、技術の習得に集中しました。今回紹介するサービスドリルはオープンスキル(状況が変化する中で行うもの)で、ポイント獲得、ゲーム獲得を目指していきます。

クローズドスキルからオープンスキルへ移るにあたり、ここで話しておきたいことがあります。

まずサービスを「知る」ことについて。私の記事や本を気に入って読んでくださっている方たちは、かなり「知っている」と思いますが、あえて私がここで「知る」ことを強調するのには心配があるからです。サービスの目的であるポイント獲得、ゲーム獲得に向かって考え続けてほしいのです。

サービス練習は夢中になるとクローズドスキルになりがちです。打ち方を覚えよう、サービスボックスに入れようと、そればかりになります。しかしサービスの本来の目的は、レシーバーのレシーブ力を下げることにあり、サービスキープをすることにあります。そのためにはレシーバーにどんなレシーブを打たせようかと考えて、考えて、サービスを打ってください。

そして、もうひとつ大切なことが「修正する」ことです。サービスを打つたび、どうだったかを「知る」ことです。そして正しくできたか、できていないなら「修正をする」ことです。もしも間違いに気づかず、修正をしないで続けたら、間違いを繰り返すことで下手が身についてしまいます。そうならないためには、サービスを「知る」こと、そして「修正する」ことがとても大切なのです。

子供たちのサービス練習でネットミスが
“ゼロ”になったのはなぜか?

あるジュニアの練習会で私はサービスの指導を担当しました。ジュニアたちは黙々とカゴの中のボールをつかんで、サービスを打つことに集中していました。私はその様子を黙って見ていたのですが、ほかのサービス練習の場でも感じることと同じことをそこでも感じました。

サービスが入ったか入らなかったか、そればかりで、ボールを打つことに夢中なのです。何もゲームなど意識していませんから、その証拠に、ネット前にはたくさんのボールが転がっていました。もしサービスを、ゲームを意識して打っていたなら、レシーバーにどんなレシーブを打たせようかと考えながら打ちますので、ボールはネットを越えて飛んでいくでしょう。何球も連続でネットにかけるようなミスはおそらくしません。

そのことを伝えるため、私は子供たちに次のような方法をとりました。

ジュニアは6人いて、カゴには200球くらいボールがありました。ひとカゴを全部打ち終わったたあとで、ネットにかかったボールを全部集めてきて、それを地面に並べ、数を数えるように言いました。それが写真の「65個」です。


ここでサービスを打つ目的の話をしました。そして「まずはネットミスを減らそう」「ネットの向こう側のサービスボックスに入れよう」と話し、「ネットにかかったら絶対に入らないもんね」「ネットミスは65個の半分までにおさめよう」と目標を設定して、2度目のサービス練習、またひとカゴを打ちました。すると、ネットミスは「24個」になり、1度目の半分以下まで減りました。目に見えてよくなったのを受けてジュニアたちはやる気満々です。3度目のサービス練習に挑戦すると、ネットにかかるサービスはもうほとんど打たなくなりました。


正しいサービスを「知る」とこうも変わるのです。でも、それを知ることなく練習を繰り返したらどうなりますか?……それが習慣になってしまいます。

ほとんどネットミスをしなくなったところで、「じゃあ次はレシーバーにボールがどう到達するかを考えよう」「もう少し回転をかける練習をしよう」と、次の話ができるようになりました。

ただ打つことほど恐ろしいことはありません。正しい目的を知れば、ジュニアたちはそれに向かって頑張るのです。すると次第に子供たちのほうから「もっと高いところを通そう」とか「もうちょっと強く打ったほうがいいな」とか、ミスの原因やサービスの効果を考え始め、修正もし始めます。そうしたステップアップが非常に重要だと思います。


写真は鈴木貴男プロ(手前)と高田充コーチ。鈴木プロが打つサービスのボール軌道は非常に高い。たからネットしない。


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