「トップ選手のバランスに学べ!」バランス指導のスペシャリスト、マーティ・スミス PART3【ストローク、ボレー】

写真◎Getty Images



Q トップ選手たちはどのようにバランスを鍛えているのですか?

A 今はオンコートとジムで過ごす時間の割合が1対1になっています。

――今世紀に入りサービス、フォアハンド、バックハンドがよりパワフルになりましたが、そこにトップ選手たちのバランスも追いついているのでしょうか? もし追いついているのなら、どのようにして追いついたのですか?

スミス 現在のトップ選手たちは昔に比べてアジリティー、柔軟性、体幹のトレーニングに多くの時間をかけているので、当然彼らのバランスのほうがすぐれています。現在の長身選手と昔の長身選手の動きを比べれば一目瞭然です。身長211㎝のライリー・オペルカは、1990年代の180㎝台後半の選手たちの中で誰よりも滑らかに動けます。


身長211cmのライリー・オペルカは、かつての高身長選手たちと比べて明らかに動きが滑らか

 オペルカはコートで2時間半を練習したあとに、2時間をジムでトレーニングしているそうです。これは現在の選手にとっては当たり前のスケジュールで、オンコートとジムで過ごす時間の割合がほぼ1対1になっています。

 もうひとつ、25年ほど前にポリエステルのストリングが導入されたことも大きな影響を与えました。ポリによってボールにより鋭い回転がかかるようになり、より角度のきついボールをアングルへ打てるようになって、相手選手はカバーしなければならないエリアが大きく広がっています。

 その結果、今世紀はワイドへの難しいボールに対してスライディングをしたり、身体を目いっぱい伸ばしながらバランスを保つことがとてつもなく重要な技術になりました。現在のモダンな選手たちは、スイング中に身体を捻じ曲げて、過去には考えられなかったほど手や腕を伸ばしてリーチを広げています。

 厳しいボールに対してバランスを保ちながら、質の高いディフェンシブなショットを返す能力は、勝敗を左右する大きな要素になりました。その結果、選手はアジリティー、柔軟性、体幹のトレーニングに力を入れ、現在のトップ選手はテニス史上最高のアスリートたちになっています。


アレクサンダー・ズベレフ(身長198cm)。2019年レーバーカップの試合前の様子

Q 物凄いスピードで動いたあとに正しいポジションに入る、バランスを保つベストな方法を教えてください。

A 低い姿勢で重心を低く保ちます。

――ビーナス・ウイリアムズは若い頃、長いストライドを生かして物凄いスピードでコートをカバーしていました。フェデラーはコート上を優雅に動きながら、正しいポジションに入るために大きなステップを素早く、鋭く小さいステップに変えています。そのように、素早く正確に動きながらバランスを保つベストな方法は何ですか?

スミス トップ選手はみんな、異なる方法でボールに近づきます。そのやり方はまちまちで面白いのですが、その中に共通点があります。彼らはみんな、素早く止まって方向転換できるように、しゃがんだような低い体勢で重心を低く保っています。


長いストライドでボールを拾うビーナス・ウイリアムズ

 向かってくるボールはすべて異なるのに、一般的に言うと、選手は小さなステップで動き始めて、ストライドを長くし、時間があればスイングする前に再び小さいステップに戻ります。トップ選手のボールは速いため、スイング前の小さなステップはあまり頻繁には見られませんが、緩いボールのときはこれを見ることができるでしょう。一般プレーヤーの間では緩いボールが多くなるため、この軽快で小刻みになるフットワークを使えるようにするべきです。

 私の意見では、スイング時のバランスを保つためのベストの方法は、“フェデラー流”の細かなステップを使うことです。なぜなら、相手が打った瞬間、つまりボールがまだ15m先の時点でのボールの落下点の予想は、5m先に来たときの予想とはまったく違っているからです。

 素早く反応できるように軽くステップすることで、たとえボールの落下地点の判断ミスがあっても、修正できます。結果としてボールに近づきすぎず、遠すぎないポジションでバランスのよいショットが打てます。


時間がないときは長いストライドで、時間があるとき(緩いボールのとき)は“フェデラー流”細かなステップを参考に

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

Pick up

Related

Ranking of articles