ジーン・メイヤーのジオメトリー・テニス_vol.03_ポジショニングとショットの関係
Q24|ベースラインでのラリーや、ネットに出た場合の〈返球可能範囲の中間地点〉についてはどうですか?
A|ネットプレーのほうが、ポジショニングに変動性が生じます。
メイヤー ベースラインプレーでコート後方にいるときは、ボールを自分から見て、右に打てば打つほど、自分のポジションを左に移します。
一方、ネットに出たときは、それはあなたが打つアプローチショットやボレーの質によって変わってきます。例えば、あなたが正統派のアプローチショットをダウン・ザ・ラインに打って出たとしましょう。私はキャノンには、「もし君が相手にパッシングショットを打てる状況を許し、そのパッシングがしっかり打たれそうで、君が必ずしもそれをうまくカバーできそうにないときは、君はダウン・ザ・ラインのパッシングショットのほうをケアすべきだ」とアドバイスします。
もしもその予想に反し、相手がクロスにアングルのパスを打ったとしても、少なくともそのボールはあなたの身体のそばを通ることになるため、あなたはそれに追いつけるチャンスがあります。
アプローチショットの質によってポジショニングはかなり変わる
反対に、双方のプレーヤーが右利きと仮定して、あなたがフォアのアプローチショットを相手のバックハンド側に打ち、あなたがショットの軌道を追うようにして前に出たときには、あなたはダウン・ザ・ラインのパッシングをカバーすることができます。でも、もしあなたがコートのセンターに向かって左寄りに場所を移せば、あなたはもはやダウン・ザ・ラインのパッシングをカバーできなくなります。なぜなら、ボールはあなたの動きとは逆のダウン・ザ・ラインに飛んでいっているわけですから。
ダウン・ザ・ラインのパスをボレーするフェデラー
相手の〈返球可能範囲の中間地点〉ということに関して、ボレーを打つときは、グラウンドストロークを打つときよりも変動性が生じます。とはいえ、一般的には、あなたが右寄りにボールを打てば打つほど、あなたはポジションを右寄りに移すことになり、左寄りにボールを打てば左寄りにポジションをずらします。
ただし前述したように、あなたのアプローチショットの質や、対戦相手のグラウンドストロークの強みと弱み、相手のパッシングのコースの読みやすさなども考慮に入れなければなりません。今日のプロのほとんどは非常に良いアプローチを打つため、彼らはネットにつくとアングルをカバーすることをあまり考えません。彼らはボレーを決めることを考えています。
ポール補足◎ネットに出たプレーヤーには2つの選択肢があります。ダウン・ザ・ラインに飛んでくるパスに届くように準備するか、それともクロスに飛んでくるパスに届くように準備するかです。メイヤーはここで〈確率〉という意味で、ダウン・ザ・ラインのパッシングのほうに重きを置いたほうが賢明であると言っています。なぜなら、ネットについたプレーヤーにとっては斜めに身体を伸ばしたり、ときには飛び込んだりして、クロスのパスをインターセプトすることのほうがダウン・ザ・ラインのパスよりも、やりやすいからだと言っています。
Q25|なぜセンターへのアプローチショットはときに機能し、ときに機能しないのでしょうか?
A|それはアプローチショットの深さと強さ、対戦相手にパスを打つのに十分な時間があるかどうかの違いです。
メイヤー センターへのアプローチショットが非常に深いとき、そして、少なくとも中程度のパワーを込めて打てているときには、それはかなりうまく機能します。でも、もしあなたのセンターへのアプローチショットが深さもなく、対戦相手に踏み込むための十分な時間を与えているときには、相手にパッシングショットを打つ上で多くのオプションを与えてしまうことになり、裏目に出る可能性が高いです。
Q26|ロブをダウン・ザ・ライン、あるいはクロスに上げるべきかの決断にジオメトリーの考えをどう適用させますか?
A|コースよりも重要なことは、相手のバックハンド側に上げ返球を弱めることです。
メイヤー あなたが右利きのプレーヤーと対戦していて、余裕をもってロブを打てる態勢にないときは、一般的には相手のバック側にロブを上げるほうがずっと安全です。なぜかというと、もし相手が通常のオーバーヘッドでボールを打てば、あなたは大きな問題を抱えることになりますが、相手がバックのオーバーヘッド(ハイボレー)を打てば返すだけとなり、決めるには至らないでしょう。それはクロスに打つか、ダウン・ザ・ラインに打つかという、コースを決めるよりも重要なものです。
Q27|左利きは右利きより、ジオメトリーをよく理解して使っていると思いませんか?
A|思います! 左利きは右利きに対するサービスをヒントに、コートを広く使うことの価値を早い段階で学んでいます。
メイヤー 左利きのプレーヤーはサービスを打つときに、コートを広く使うことの価値を早い段階で学んでいるように思えます。彼らはアドコートから右利きのバック側に向け、彼らにとってごく自然なスライスサービスを打つときにすごく大きな優位性を手にするのです。それが迅速にジオメトリーの理解を生み出します。
ところが右利きのプレーヤーを同じ状況に置いたときに、彼らもスライスサービスを打てるわけですが、相手は圧倒的に右利きが多くなり、それは彼らのフォア側に向かって飛ぶことになります。つまり、右利きが左利きと同じやり方でポイントを取ることは非常に難しく、彼らはこの戦術をそれほど使いません。反対に左利きはそれを最高のショットとして使うのです。
私が知っている左利きのほとんどが、サービスを通して、グラウンドストロークやボレーでもコートを広く使う術を学んでいきます。なぜなら彼らはサービスのやり方を覚えることで、そうするよう方向づけられ、訓練されていくからです。
左利きのサーバーは早い段階から、右利きと対戦する中でコートを広く使うことのメリットを学んでいき、それをプレー全体に落とし込んでいく
Q28|デュースコート、アドコートでのサービスの立ち位置、セカンドサービスで立ち位置を変えることは有利に働くか否かについて教えてください。
A|サービスをセンターに曲げずに打てる能力、ワイドにスライスサービスを打つ能力、そしてフォアがどれくらい武器かが立ち位置を決めることにつながります。
メイヤー ファーストとセカンドでサービスの立ち位置を変えるプレーヤーと対戦するのは興味深いですね。
ほとんどの右利きのプレーヤーにとって難しいサービスは、デュースコートからTゾーン(センター)を狙い、それが実際にTゾーンにとどまり対戦相手のほうへ曲がっていかないようにすることです。それができる能力と、ワイドにスライスサービスを打つ能力が、彼らのサービスポジションとコートを広く使う能力を決めます。
どこに立つかを決めるほかの要素もあります。あなたがフォアを主な武器とするプレーヤーであればあるほど、サービス後の次のショットをフォアで打ちたいと思うのであれば、あなたはセンターマーク近くに立つことになります。
ラファ(ナダル)が、サービスを打ったあとの最初のショットの85%をフォアで打ったある大会のことを憶えています。彼のポジショニング(彼はアドコードで片足をセンターマークぎりぎり近づけていました)、彼の素早く右に動く能力(フォアハンドで打つために右に動きます)、そしてアドコートでサービスを打つ際のラファの立ち位置ゆえ、彼のバック側にリターンする場所はほとんどないという感じでした。
右利きのプレーヤーはサービスをセンター(Tゾーン)にほとんど曲がらないように打つのが課題であることが多い。ということはセンターマーク近くから打つべきで、サイドライン寄りから打つほど、サービスは曲がってしまう
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