ジーン・メイヤーのジオメトリー・テニス_vol.03_ポジショニングとショットの関係



Q29|鋭角なショットを仕掛けるプレーヤー、そういうショットに対して防御するプレーヤーの双方にどんなアドバイスをしますか?

A|アングルショットは、自分が優位に立っているときに使うのはいいですが、そうではないときに使うと自分の足を引っ張るものになりかねません。

メイヤー すぐれたディフェンダーたちを見ていると、彼らが非常に迅速に対戦相手が打ち得るショットを〈読んでいる〉ことに気づくはずです。凡庸なアングルショットを打つことのリスクのひとつは、自分にあまり大きな実りを与えることなしに、“カバーしなければならないコートの範囲”を広げてしまうことにあります。ですから鋭い角度のショットは、自分が優位に立っているときに使います。そうではないときに使うと自分の足を引っ張るものにもなりかねないということを知っておくべきです。


鋭いアングルショットは、アンドレスクが見せているように非常に効果的だが、一方でうまく使わないと相手により鋭い角度に切り返される

Q30|ダウン・ザ・ライン、深いクロス、短いクロス、ドロップボレー、ファーストボレー、セカンドボレーなど、各ボレーにジオメトリー的な長所と短所はありますか?

A|ネットに近づいて打てればジオメトリーの可能性は大きく広がります。

メイヤー 一般的にいって、あなたのフォアボレーあるいはバックボレーが極端に弱くない限り、最良の策はファーストボレーを深く、ダウン・ザ・ラインに打つことでしょう。サービスライン辺りからの、中くらいの高さの“アプローチ”となるファーストボレーでは、弱くて短いボールを攻撃していたり、対戦相手が懸命に走っていたりする状況でない限り、あなたはそれをよりアプローチショットとして打ち、ネットでのより良いポジションを確立させるようにします。

 前に動いていき、サービスラインとネットの間くらいの位置に至ったら、そこでジオメトリーの可能性が開けることになるでしょう。

 ローボレーに関しては、私は短く落ちる洗練されたショット、ドロップボレーやアングルボレーのほうを好みます。ネットの高さか、それより高いボレーに関しては、クロスかダウン・ザ・ラインの選択に、深さとパワーの要素を加えます。


アプローチショットとして打つファーストボレーは、一般的にダウン・ザ・ラインに打つとよいポジショニングがしやすい

ローボレー


ミドル〜ハイボレー

Q31|あなたは違うパートーナーと組んで2つのグランドスラムのダブルス・タイトルを獲得しました。ダブルスでは、どのジオメトリーの原理を採用していましたか?

A|ダブルスではコートの幅が広がり、ふたりのプレーヤーが立ちます。シングルスには存在しないジオメトリーの世界があります。

メイヤー ダブルスではアレーコートの分、コート幅が広がり、何よりふたりのプレーヤーがコートをカバーすることによって、シングルスには存在しないジオメトリーの世界が開けます。これらの違いは、アングルやショットコントロールが好きなプレーヤーに好機を提供するでしょう。

 ダブルスでは頻繁に、パワーの効果はシングルスよりも低くなります。というのもシングルスコートの2倍ではないサイズのスペースをカバーしているふたりのプレーヤーの間を抜き去るのは、難しいことだからです。

 私のパートナーはアドコートのほうが好きだったので、私は通常はデュースコートでプレーしていました。そんなわけで私の低く短く角度のついたフォアをアレーに打つ能力は、その次のショットに多くの可能性を生み出していました。トップスピンをかけてダウン・ザ・ライン、あるいはど真ん中に打つ、ロブを打つ、といった具合に。もし私がその鋭角なフォアを打てなかったら、私とパートナーは、それらほかの攻撃的ショットを打つチャンスを手にしていなかったことでしょう。

 鋭い角度のついたショットは、コート上により大きな空きと隙を生み出し、そういうとき対戦相手はボールに追いついても前屈みとなり、身体を精一杯伸ばして返球することになりました。そうなると私たちのペアは多くのよい選択肢を手にでき、優位に進めることができました。


ダブルスはコートの幅が広がっても、ふたりでカバーし合うため、シングルスにはないジオメトリー の世界が広がる


アングルへのリターンをきっかけに、トップスピンをかけてダウン・ザ・ライン、ど真ん中へハードヒット、ロブなど、多くの選択肢が持てた

※いずれも写真はイメージ

Q32|「ジオメトリーは力だ。それに芸術が加われば、もはや抵抗はできない」と、古代アテナイのギリシア悲劇における三大悲劇詩人の一人、エウリピデスは言いました。この格言はテニスにも当てはまりますか?

A|ジオメトリーを本当に理解しているプレーヤーの試合へのアプローチは、芸術的でクリエイティブです。

メイヤー 絶対的にそうです。ボールを打つメカニズムだけでなく、コートのジオメトリーを本当に理解しているプレーヤーは、テニスの試合をプレーすることへのアプローチにおいて、もっとも芸術的でクリエイティブです。

 マリア・シャラポワは素晴らしいプレーヤーですが、彼女のアプローチは、こん棒でぶっ叩くような感じで、非常に強く打って相手を力で圧倒します。それはヘビー級のボクサーがノックアウトパンチを狙っているような感じです。

 私はアンドレスクやバーティのような、創造的なアプローチを持つプレーヤーが好きです。彼女たちは結果的にポイント獲得につながる、ポジション的な優位性を生み出す多様なショットを紡ぎ合わせていきます。すぐさまノックアウトパンチを目指すのではなく、8発のジャブを打ってからノックアウトパンチを繰り出すという感じです。


写真は世界1位のアシュリー・バーティ。バーティは最終的にポイントを獲得するために、優位性を生み出すためショットを紡ぎ合わせていく。決してパワーでノックアウトを取ろうとしていない




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