WIMBLEDON LEGEND STORY〜伊達公子スペシャルインタビュー〜

グラフ戦での“流れ”
私のテニスは少し特殊で、自分からパワーを生み出したり、自分から一発でウィナーを奪っていけたりするようなテニスではありません。タイミングを取りながら、相手との波長を合わせ、その中から流れを引き寄せていく。試合の中では常にそのことにフォーカスしていました。それが3、4ゲームでピタッとくることもあれば、1セットくらいかかってしまうこともある。だからスロースターターと言われてしまっていたわけなのですが。
グラフ戦もファーストセットは2-6、セカンドセットも0-2となりましたが、ファーストの途中から「もうちょっとで波長が合うんだけどな」という感覚はありました。その感覚をつかみ切るというのは長いラリーの後とかに起きやすいのですが、2-2としてからの第5ゲームを9回のデュースの末にブレークしたときには、完全に波長を合わせることができていました。

第1セットこそグラフの気迫にポイントを奪われたが、第2セットは0-2から6連続ゲーム奪取。流れを一気に反転させた
グラフはファーストセットのときからポイントの中で私が多少の変化をつけると、「流れは持っていかせない」というすごい気迫を見せていましたが、さすがにセカンドセットではフェドの試合がフラッシュバックしたのではないでしょうか。グランドスラムでは勝たせないという女王のプライドと、フェドのときと同じように流れを渡してしまったという葛藤。らしくないほど、イライラしている瞬間が見てとれました。
「あのまま続けていても、最後に勝利が待っていたかわからない。 ただ、その可能性は高まっていた――」
セカンドセットの第7ゲームでは観客から突然「シュテフィ、結婚して!」という声が上がりましたね。グラフが見事な切り返しをするわけですが、あのとき一瞬、「私も合いの手を入れようかな」と思ったんです。でも、つかみかけていた流れを止めたくなかったし、自分の集中や試合全体の流れが変わるのもイヤだった。もともとそういうことをするタイプでもないし、それをする勇気もなかった(笑)。ただ、そういうことを瞬時に考えることができる冷静さはあったのかもしれません。
試合が始まったのが午後の7時40分過ぎと遅かったこともあってセットオールとなったところで日は暮れかけており、そこでグラフが日没サスペンテッドを要求しました。グラフにしてみれば止めたかったというのは冷静に判断できましたが、ボールはまだ見えていました。とはいえ、1セットを最後までプレーするのは難しい。ゲーム数が少なくなって明日に持ち越しとなればグラフに有利になる。だったらここで止めるのが妥当なのか。より勝利に近づくために、どうすればいいのか。いろいろな考えが頭を駆け巡っていました。

セットオールとなったところでグラフが順延を要求。勝負の分かれ目となった
あとから考えれば、ポジティブな流れの中で数ゲームでもプレーしていれば、リードを奪えていかもしれないとは思います。勝負事ですから最後に勝利が待っていたかはわかりません。ただ、あのまま続けていれば、そのまま次の日に順延するよりもその確率は高まっていた。でも、スーパーバイザーまで出てきている中で、食い下がってでも続行を要求するようなタイプではなかったですからね。
翌日、グラフとの事実上の1セットマッチというのはやはり簡単なものではありませんでした。私がスロースターターなのに対し、グラフは相手にまともにプレーさせないようなスタートダッシュをかけることができます。ショートラリーで速くポイントを奪いにきていましたし、もう流れは渡さないという威圧感を感じました。前日の状態を完全にリセットした、強いグラフがそこにはいました。
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