中川直樹「50の質問」プロになってから今が一番テニスを楽しいと感じる|Player File 10



「ツアーが中断したとき、『チャンスでしかない』と思った」

Q23 自分のメンタル面を自己分析すると?

「テニス面ではわりと落ち着いているほうだと思います。試合では冷静さが一番大事だと思っているので。その点ではマイペースな性格がテニスでは生きていると思います」

Q24 試合での調子のバロメーターは?

「バロメーターというか、フィーリングや調子が悪いことはよくあるので、あまり悪いと思い過ぎないようにしています。その日のコンディションやフィーリングの中で、どうやるのか、何ができるのかをいつも考えています」

Q25 以前からそうした考え方ができていた?

「以前は自分の調子に左右されていたことがありました。そこに意識が行き過ぎて、相手に目が向いていなかった。テニスは相手と対戦するスポーツなので、自分の調子が悪くても相手に嫌だと感じさせることができたらそれでいい」

Q26 そうした考え方に行きついたきっかけは?

「何かきっかけがあったわけではなく、徐々に気づいていった感じです。調子が悪い中で最終的には開き直りみたいな感じだったんですけど(笑)。そのおかげでどんな状態でもより冷静に試合に入れるようになりました。時には開き直りや大胆さも必要なので」

Q27 技術面でさらに改善していきたいところは?

「技術面というより、自分の武器であるサービスとフォアのポイントパターンをもっと磨いていきたいです。そこにもっとネットプレーも入れていく。展開の仕方に目を向けていきたいです」

Q28 武器であるフォアハンドのストロングポイントは?

「対戦相手に直接、聞いてみたりするんですけど、『常に打たれる、打たれそうな雰囲気がある』と言われているときは状態がいい。フォアで相手にプレッシャーを与えることができているということなので」


ジュニア時代からフォアハンドでの展開力が生命線だ

Q29 2014年にUSオープン・ジュニアでダブルス優勝した直後にプロ転向を果たしましたが、どんなスタートでしたか?

「思ったようにいきませんでしたね。プロ転向の前から右肘の状態があやしくて。小さいときから痛めていた古傷だったのですが、15年春の日本のフューチャーズ・シリーズで痛みが限界に達してしまって。そこから約1年間、リハビリ生活になってしまいました」

Q30 右肘はどんな状態だった?

「ひと言で言えば炎症なのですが、靱帯のくっついているところが引っ張られて剥離しかけている状態でした。あそこでストップすることができてよかったです。まだプロ転向したばかりだったし、ポジティブにとらえて落ち込むこともありませんでした」

Q31 復帰から約2年後の2018年に今度は右手首を痛めてしまいましたが、どんな状況でしたか?

「5月の韓国でのチャレンジャーですね。試合が始まって2、3ゲーム目くらいに右手首から変な音がして、手にまったく力が入らなくなってしまった。でも、わりと痛みには強いほうなので最後まで試合は続けたのですが、あとで病院の先生には怒られてしまいました」

Q32 実際の症状は?

「右手首の腱脱臼でした。最初は2018年中の復帰は無理と言われていたのですが、筑波大学病院の先生に『手術をして3ヵ月で治す』と言っていただいて、手術することを決めました。ただ先生に『手術しているところを自分の目で見て、治るんだということを頭に入れなさい』と言われて。今後の不安を取り除くためにそう言ってくれたみたいですけど、実際に手術している自分の手首の中を見ているときはちょっと頭がクラっとしました(笑)。意外と手首の中ってきれいなんだなと」

Q33 2度目の右手のケガはメンタル的にもつらかったのでは?

「右肘のケガとは比べものにならないくらい落ち込みましたね。プロになってからすぐケガしたこともあってまったく感覚がつかめず、自分の思うテニスと実際にやっていることがかみ合わず、すごくモヤモヤしていたんです。そこに右手首のケガが重なった。リハビリもなかなかモティベーションが上がりませんでした」

Q34 そこからメンタル的にどう立て直していった?

「5ヵ月ほどで復帰できたのですが、その時期に圭君と一緒に練習させてもうらことがあったんです。前年に圭君も僕と同じ右手首の腱脱臼を経験していたので、そこでいろいろなことを聞かせてもらったことも大きかったです」

Q35 どんな話を聞かせてもらった?

「圭くんも同じように手首のケガのあとにフォアの感覚がつかめない時期があったらしくて、『どうやって感覚がよくなったんですか』と聞いたら、『ひたすらめげずに、ミスを怖がらずにラケットを振り続けた』と教えてくれたんです。それを聞いて、ただラケットを振ることをマネするだけではなく、できるだけポジティブでいよう、前向きに生きていこうと思えるようになって。そこからメンタルもテニスも少しずつ上向いていきました」

Q36 橋本総業ホールディングスに所属して国内に拠点ができたことも大きかった?

「2019年の終わり頃から徐々にテニスの感覚もつかめていく中で、新しい環境をいただけこともあっていろいろなことがうまくかみ合っていきました。日本リーグでは団体戦とはいえ久々に優勝の感覚を味わうことができてうれしかったですし、いい流れを感じていましたね」


日本リーグでの優勝も“いい流れ”を加速した

Q37 その中でコロナ禍によりツアーが中断したときはどう思いましたか?

「その頃にはすごくポジティブマインドになっていたので、『チャンスでしかない』と思いましたね。体づくりは絶対に必要なことだと思っていたので、トレーニング器具を一式そろえて部屋にジムをつくって。フィジカルアップに励んでいました」

Q38 成果はどうでしたか?

「自粛期間があけてコートで練習したときに手応えがありました。特にサービスがスピードを含めて良くなっていると感じました」

Q39 全日本の前に西岡選手のヨーロッパ遠征に同行しましたが、きっかけは?

「ヨッシーから『ヨーロッパ来ない?』みたいな感じで誘ってもらって。ヒッティングとして2週間、同行させてもらいました。どうせヨーロッパに行くなら大会にも出ようと、1ヵ月のスケジュールで行きましたが、いろいろな刺激をもらうことができました」


プライベートでも仲が良い西岡には大きな刺激を受けている

Q40 どんな刺激を受けましたか?

「久しぶりに海外のトップ選手たちのテニスを見て、すごくいいイメージを持って帰ることができました。僕はけっこう見たものに影響されやすいので(笑)。ポルトガルのフューチャーズ2大会では思うように勝てませんでしたが、次に生かせるイメージを持って全日本に乗り込むことができました」

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