「 リズムはストロークの
　構成要素であり、
　リズムとタイミングは
　別々に考えなければいけません」

――男女では身体とメンタリティーが異なるため、リズムを教えたり、習ったりする方法も異なるのでしょうか？

　これはいい質問です。リズムをトレーニングするときに、男女の違いで考慮すべき点があるのかどうか。テニス選手がボールを打つときは、基本的により効果的な方法と効果的ではない方法があります。しかし、それは男女差によるものではありません。

　男女の間で異なるのは、むしろ学ぶスタイルです。それも、もしかしたら性別の違いは関係ないのかもしれない。A選手とB選手の違いというように。その違いは男子と女子かもしれないし、14歳と20歳の違いかもしれない。あるいはオーストラリア育ちとイタリア育ち。生まれ育った環境によって学び方は異なり、そこに性別の要素も少しかかわるかもしれません。

　それ以外の違いはゲームスタイルが考えられます。しかし、ここでも性別の違いは関係ありません。ゲームスタイルは学ぶスタイル、育ち、家庭環境、遺伝と、性別とは関係ないものです。

　だからこそ、トレーニングをする方法は異なりますが、その違いはそれぞれの違いに合わせたものになります。ただし、確かなのはサービス、グラウンドストローク、ボレーの動きを正しく行う基礎が存在し、よい選手は男女関係なくそれらを備えているはずです。

――『ジャーナル・オブ・スポーツ・サイエンス』（スポーツ科学誌）が、概日リズムの神経筋への反応とテニスのフィジカルパフォーマンスに関する運動連鎖の効果を測る実験を行いました。標準的なウォーミングアップのあとに、13人のプロ、あるいはプロレベルの男子選手が以下の実験を2度行いました。サービスの速度と正確性、垂直飛び、握力、アジリティーテスト、10ｍダッシュ。その結果、「テニスのパフォーマンスは夕方前に比べて午前中に行うと落ちる可能性がある。それゆえコーチや選手は一日のスケジュールを決めるとき、正確性、パワー、スピード、アジリティーに特化したトレーニングは午後に行うことを推奨する」という、この意見にあなたは同意しますか？

　かなり少数の選手による小さな実験から出た評価を、そのまま全体の結果として適用してしまうことには、とても慎重にならなければなりません。その情報だけでは、それらの選手たちの概日リズムや睡眠の習慣といったものがわからないからです。

　さらに、栄養摂取の計画もわかりません。その実験の前、最中、後に何を食べたのか、そしてそれが実験結果にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、不確定要素が多いため、慎重にならざるを得ないのです。

　一般的に、トレーニングの最適な時間について午前中なのか午後なのかは、選手個々によって異なります。一定数の選手は午後のほうがパフォーマンスが上がるのに対し、そのほかの選手は午前のほうがパフォーマンスが良いとあります。個々を見ると、早起きの選手は午前中にパフォーマンスがよく、遅く起きる選手は普通午後のほうが良いようです。個々の違いを最大限考慮して、トレーニングの効率化を図らなければなりません。

　つまり、選手がフレッシュな状態のときに特定のトレーニングをしたほうがいいでしょう。神経系がフレッシュな状態ならスピードとパワーに重点を置いたトレーニングの効果が大きくなります。疲労が見えるなら、持久系、ストレングス系メニューがいいでしょう。これらの違いをよく理解することがとても重要です。

――リズムはストロークの上達に役立ちますか？

　リズムはストロークの構成要素なので、その定義は意味が通りません。試合で実践できるようにストロークの練習をしているとき、いいリズムは重要なポイントになります。
　ここでまず理解しないといけないのは、トレーニングリズムの意味です。トレーニングリズムは、運動連鎖がお互いにシンクロし、エネルギーを溜めて放出する効果的な変換を促すことを確かめること、それがすべてです。

　トレーニングリズムについて語るなら、正しい枠組みの中で語ることがまず第一です。もし自分の動きのパターンが非効率的で、それをトレーニングしてしまい、“非効率的な動きのパターンを練習している”と主張するのなら、非効率的な結果に結びついてしまうことになります。つまり、間違った方法で練習してしまわないよう注意しなければなりません。

――向かってくるボールについてのリズムとタイミングの関連性は何ですか？

　向かってくるボールへのリズムやタイミングは、予測、反応時間、身体のポジションにかかわるものです。なぜならリズムとタイミングは、別々に考えなければいけないものだからです。

　フットワークのタイミングを測るとはーー自分の身体を正しいポジションに置き、自分のエネルギーをもっとも効率的に解放できるようにパワーを最大限に溜めて最適化させるように、向かってくるボールに対してフットワークのタイミングを測ります。非常に重要なものです。

　自分が正しい動作のタイミングを、リズムの面で正しくとらなければ、それぞれの動きを同期させることができず、パワーを効果的に溜めることができません。向かってくるボールを利用して、足をセットして、腰を回転させ、効果的にパワーを溜めてから、そのエネルギーをもっともシンプルかつ効果的に変換させるのです。（2）「リズムをよく知る」へ続く