データ分析の第一人者、レオ・レビン「データはいかにテニスを変え、今後どのような影響を及ぼすのか?」

Q6|インフォシス(Infosys)とATPによる新たな技術サービスのパートナーシップについて教えてください。

A インフォシスとATPが行っていることを、実は私もよくわかっていないのだ。ただひとつ言えるのは、我々がマッチファクトのために作り上げたテクノロジーに多くのことがかかわっている。テニスのユニークな点のひとつはスコアリングシステムだ。他のスポーツと異なり、より多くのポイントを獲得した選手やチームが必ずしも勝つわけではない。

 我々のシステムは、個々のポイントをより深く分析して、あるポイント、カギとなるようなシチュエーションにおいて、選手の能力がいかに勝利、あるいは敗北につながるのかを導き出そうとしている。他の多くのスポーツでは、ただ出されただけの数字を見ている。バスケットボールなら誰が何ポイント決めて、誰がリバウンドを何回拾い、アメリカンフットボールなら誰が何ヤードゲインしたか。しかし、テニスでは数字を特定のシチュエーション、特定のパフォーマンスに区分しなければならない。

Q7|試合やトレーニングのデータ分析論の洞察は、どのようにコーチングの改善に役立つのでしょうか?

A コーチングや選手の育成で重要なのは、まずコート上で何が起きているのかを理解することだ。テニスがデータやスタッツの導入に遅れたことで、現在直面している問題は、多くのコーチや選手が、自分が見たり、感じた以外のものをあまり受け入れない傾向にあることだ。

 だから、今後は、コーチが見て選手がコート上で感じたことに、データをうまく関連づけることが重要になる。その関係をうまくつなぐことができれば、今後コーチングを大きく改善するチャンスだ。

Q8|実際に、コーチングを改善させた洞察をひとつかふたつ、教えてもらえますか?

A すべての選手は異なるという事実を忘れてはならない。データ分析によって選手個々の違いを洗い出し、一般的に選手が何をするかではなく、自分が指導する特定の選手が何をするかにフォーカスし、その選手の試合をどれだけレベルアップさせられるかがカギになる。

 ここでひとつ具体的な例を挙げる。スタンフォード大学のテニスプログラムとともに詳細なデータやスタッツに初めて取り組んだときのことだ。彼らの女子ナンバーワン選手、リンダ・ゲーツが伸び悩んでいて、コーチ陣は成す術がなかった。

 そこで、我々は彼女の試合からデータを洗い出した。彼女はサービスゲームでデュースコートのときは相手を圧倒していたのに、アドコートではかなり苦戦していたことに気づいた。これはただ試合を見ているだけではわからないことなので、コーチはどこから手をつけていいのかわからなかった。

 しかし、データや数字に着目したことで、コーチは彼女のアドコートでのショットのパターンを練習するという答えを導き出した。その結果、彼女はその年(1985年)のNCAA選手権の単複優勝という快挙を成し遂げた。

Q9|クレイグ・オーシャネシーのウェブサイト(Braingametennis.com)には「ロジャー・フェデラーがテニスのもっとも大きな嘘を暴く」という文章があります。「テニスのもっとも大きな嘘」とは何ですか?

A クレイグのウェブサイトをじっくり見たことはないが、彼と仕事をしたことはある。私がこのような文章、今回は“テニスのもっとも大きな嘘”の陳述で大きなチャレンジになるのは、すべての選手のプレーは異なるという事実だ。選手のスキルも異なる。ここでやってはならないのが、一般的な考え方をすべての個人に当てはめようとすることだ。ラファエル・ナダルがイボ・カルロビッチのようなプレーをするわけじゃない。フィジカルに大きな違いがあり、2人ともまったく異なるプレースタイルだ。

 分析で大事なのは、自分が担当した選手がどんなプレーを得意とし、どんなプレーが不得意なのかを理解して、彼らの弱点を克服して、得意なプレーを最大限に生かすことだ。

身長差が26㎝もあり、利き腕も異なるナダル(左)とカルロビッチに同じデータの枠にはめるのはナンセンスである

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