データ分析の第一人者、レオ・レビン「データはいかにテニスを変え、今後どのような影響を及ぼすのか?」
Q25|「データ分析で大事なのは、キャリア、試合、ポイントを予想し、ショットを測り、戦術を取り囲むこと」。これに同意しますか?
A 今テニスでかなり重要になっているのはフィジカル面だ。つまり、強さ、スピード、クイックネス、アジリティと柔軟性。データ分析を考えると、そこに欠けているのはバイオメトリクス(生物統計学)。君が挙げた4項目については同意する。
今注目しているのはプレッシャーのかかったポイントでの選手のパフォーマンスだ。30-30と40-40のポイントに着目したんだ。ブレークポイントはもっともプレッシャーがかかる場面。30-30からポイントを取ればゲームポイント、失えば相手のゲームポイントになる。
これは勝敗を分ける非常に重要な要素だ。何人かの選手はあまりブレークポイントに直面しないという。プレッシャーのかかる場面が少ないということだ。だから、プレッシャーのかかる状況でのプレーだけではない。プレッシャーのかかる場面を避けることも重要な意味を持つ。
Q26|「テニスのコーチは、データ分析を導入するか、スポーツパフォーマンス分析者をチームに加えることで、選手のトレーニング内容、栄養、睡眠パターンも調べてトレーニングプログラムの構築やケガの予防に生せば、コート上のパフォーマンスアップにつなげられる」という意見に同意しますか?
A この分野はコーチの専門ではなく、フィジオコーチの担当になる。すべてのトッププレーヤーは、この分野において多くの努力を重ねている。データ分析はテニスコート上だけではなく、ジムでも重要になる。
データ分析はデータの組み合わせなので、トレーニング、栄養、睡眠にも大きく左右される。選手のパフォーマンスを評価するとき、練習メニュー、栄養の摂取、睡眠パターンを見て改善が見られるなら、いい方向に進んでいるということだ。ここで3選手の成功例を紹介しよう。
ノバク・ジョコビッチの成功例
グルテンフリーダイエットで体重を減らしてコート上での動きが素早くなり、健康状態もよくなった。この取り組みのあとに世界ナンバーワンになった
リンゼイ・ダベンポートの成功例
ジョコビッチと似た道を歩んだ。減量し、フィットネスレベルを向上させ、コート上での動きがかなりスピーディーになった。そこで大事なのは、彼女がコート上ですごくクレバーになったこと。フィットネスがよくなったことで、辛抱強くなり、ショットの選択肢が増え、長くラリーを打ち合えるようになった。トップ10から一気にナンバーワンまで上り詰めた。
ロジャー・フェデラーの成功例
フェデラーが選手寿命を延ばした秘訣は、フィジカルトレーニングの量を減らし、出場する大会数を減らしたこと。十分な休養と、適正なトレーニング量にして、メジャー大会に出場するときに、トップコンディションで迎えられている。
Q27|データ分析とバイオメカニクスの間をつなぐものは何でしょうか?
A データ分析は選手のパフォーマンスレベルと、大事な場面でのショットの有効性を表してくれる。その次の段階として、ストロークのバイオメカニクスを勉強する必要がある。特にプレッシャーのかかった場面ではそれが大事になる。例えば、ミスが起きているときはボールのバウンドが120㎝のときなのか、90㎝のときなのかで、ボールのコンタクトポイントを修正することができる。
Q28|データ分析において、マッチデータの中であなたが重要視するものは何ですか?
A 今後はプレッシャーのかかった大事な場面でのデータ分析により注目が集まるだろう。また、選手は試合の半分はサービス、残りの半分はレシーブしているのだから、どちらのデータ分析も重要視している。
アンフォーストエラーが何度も取り上げられるが、それはサービスゲーム、あるいはレシーブゲームで起きているのかを見なければならない。アグレッシブなプレー、ポイントを支配するプレーは称賛されるが、そのプレーはいつ起きているのか? ファーストサービスなのか、セカンドサービスなのかも大事なポイントになるだろう。
Q29|キリオスのような選手にとって、ゲーム理解力、感情をコントロールする力はデータ分析と同じくらい重要なものだと思いますか?
A 彼に限らず、すべての選手にとって重要になる。パフォーマンスの大きなカギになるのは、ゲームプランをもっているかどうかにかかわる。とても単純なことかもしれないが、自分が何をしたいのかを知ることで、より賢くプレーできるものだ。大事な場面での判断を省いてくれて、考えることなく、その場面でただ反応すればいいだけだ。
これはテニス選手にとって大きなアドバンテージになる。その瞬間に何をしようか考え、判断するのでは遅すぎるのだ。バイオメカニクスにもかかわってくる。相手がコーナーに打ったボールを追っているとき、最初の一歩を踏み出したときにどこへ打ち返すか決めていれば、フットワークはよくなり、打つ瞬間のバランスもよくなるものだ。
とてつもないポテンシャルを秘めるキリオスが感情をコントロールできるようになれば、さらに強い選手になれるだろう
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