データ分析の第一人者、レオ・レビン「データはいかにテニスを変え、今後どのような影響を及ぼすのか?」

Q13|コートの上で何が起きているのかを理解するのに重要なことは何ですか?

A 戦術を実行するための、シンプルな戦術、戦略だ。例えば、我々はショットのスピード、深さを計測し、シチュエーションによって選手の能力を測っている。ファンにとって、プレッシャー下でいいプレーができる選手が、なぜ相手に対して大きなアドバンテージをもつのかを理解することはとても大きな意味を持つ。

 例えば、テニス界でも最高レベルのサービスをもつフェデラーは、試合最初のゲームでは、85%のファーストサービスポイント獲得率を誇る。しかし、対戦相手がリターン力に優れているノバク・ジョコビッチならば、試合の行方はデータ通りにはならない。ある戦術、あるショットパターン、選手の強みと弱みは、試合を見るファンに、より深い洞察力を与えてくれる。

 これらすべての結論は、ファンがテニスをより深く理解すればするほど、試合に引き込まれるということだ。テニスの経験がないファンから「キックサービスを打て!」「ネットに出ろ!」というような声が出てくるかもしれない。

Q14|PlaySightやバボラ、IBMが進めているデータの技術は現在いかがですか?

A これらはすべて、多くの情報と理解を与えるためのものだ。PlaySightはクラブに所属する選手のためのもので、プロと同じレベルのデータ分析を提供する。自分の試合の映像を含めた基本的なデータ分析によって試合を振り返ることができる。

 バボラのテクノロジーは、選手によるフィードバックを直接ラケットの性能向上に生かしている。特に、ラケットがどれほどよくボールにコンタクトし、ショットの質がどの程度なのかを分析できる。

 IBMはテニスをより全体的、一般的な視点から分析して、データ、データ分析、スポーツの認識システムから深い洞察を提供している。「ワトソン」とう認知コンピュータシステムや、古くから利用されているデータ分析ツールを生かして、データの中から宝物(有用なデータ)をとり出し、試合や選手について非常に興味深い内容を伝える。

バボラPLAYはグリップエンドをパソコンなどとつなぐことができる

Q15|データから見て、どのジュニアの選手が将来ワールドクラスの選手になれるか予想できますか?

A 残念ながら、今のところまだできない。データ分析と予想は異なるものだからだ。データから結論を出そうと試みてはいるのだが、そのためにはまだデータ量が著しく足りていない。どのジュニア選手がワールドクラスの選手に成長するかを予想するには、遺伝学、バイオメカニクス、すべての身体的特徴を計測した上で、選手のコート上のパフォーマンスを測るためにデータ分析をしなければならない。ただ、選手がこれから大きな成長曲線を描くかどうかは、データの中の特別に優れたポイントから予想することはできる。そこにかかわる要素は膨大な数になり、その多くはフィジカル面に関連しているので、データから算出することができない。

Q16|データ分析をうまく活用している組織はどこですか?

A 私はそれほど多くの組織を知らないが、フロリダのIMGアカデミーなら知っている。彼らはテニスを含めたすべてのスポーツプログラムにおいて、それぞれに合ったデータ分析を利用している。素晴らしいトレーニングセンターがあり、データから選手のフィジカルを向上させようとしている。

 USTAナショナルテニスセンターはまだデータ分析を導入したばかりだ。いろいろ実験をしている段階で、そこにいる選手たちのためにレベルの高いデータ分析をして、選手として成功するために必要なトレーニング施設を提供しようと、インフラを整備している。

2016年のフレンチ・オープンでデータ収集が行われ、テレビの前の視聴者に届けられた

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