データ分析の第一人者、レオ・レビン「データはいかにテニスを変え、今後どのような影響を及ぼすのか?」

Q17|テニスの用具やサーフェスにもデータ分析は適用できるのですか?

A もちろん、できる。データ分析は異なる種類の用具を、異なるサーフェスでどのようなパフォーマンスを発揮できるかを突き止めることができる。例えば、あるトラッキングシステムを用いて、どのラケットとどのストリングの組み合わせが、選手のパワーを最大限に引き出せるかがわかる。選手にいくつかの練習、特定のショットを打たせ、ラケットから放たれるボールのスピードを測るのだ。

 サーフェスに関しては、データ分析は大きな助けになる。どんなサーフェス、エリアでどんなショットが有効かを導き出すことができるからだ。例えば、テークバックの大きい選手なら、球足の遅いサーフェスで活躍する可能性が高い。

 だが、その選手をボールが低く速く弾む、球足の速いコートでプレーさせたら、その選手は適応するのに苦労する。データ分析はサーフェスでボールの弾むスピードと軌道を測ることができる。つまり、ボールがどのように弾むのかを分析することで、ある選手の特定のサーフェスでのプレーを修正することにつなげられる。

Q18|データを元に発明された製品にはどんなものがありますか?

A バボラはセンサー入りのラケットを開発した。ラケットに装着できるセンサーを開発した会社は、ほかにもいくつかある。そのセンサーからはボールがストリングに当たる瞬間のスイングスピードなど、いろいろなデータを抽出することができる。バボラの他にはゼップ、ターニングセンス(TurningSense)、さらに驚くべきことにソニーもラケットセンサーの分野に参戦している。

USオープンの試合からデータを抽出するスタッフ

Q19|何千試合も分析した中で、どのような要素が男女のテニスにおいて試合の行方に大きな影響を及ぼすと思いますか?

A もっとも影響を与えるのは多くの場合、アンフォーストエラーの数だ。ミスをすればするほど、相手を有利にしているのだから。選手が上達するのに、このデータを測り、その量を定めることはとても重要なこと。

 これには、どのショット、どの状況でミスをおかしているのかを理解する必要がある。ここで注意しなければならないのは、試合のテンポとスピードを圧倒的にコントロールするようなタイプの選手が何人かいるということ。そして、それを可能にするだけの武器をもっている。これが得意な選手はシュテフィ・グラフとセレナ・ウイリアムズだ。

強烈なショットで多くのウィナーを決めるグラフ(下)やセレナはアンフォーストエラーが多くても勝てるのだ

Q20|グラフとセレナはどのようにデータを生かしたのですか?

A 完全に自分がもっている身体能力で彼女たちはデータを生かした。言い方を変えれば、彼女たちはパワーを解き放った。彼女たちのパワーが相手に凄まじいプレッシャーをかけ、相手はほとんど攻撃的なショットを打てるようなポジションに入れなかった。そのため、彼女たちはアンフォーストエラーが多く、対戦相手はウィナーも、ミスを誘発するような素晴らしいショットも非常に少なかった。そして試合のデータを抽出してみた。彼女たちは十分なウィナーと相手に十分な数のミスをさせていれば、アンフォーストエラーの数はさほど需要ではなかったのだ。

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