データ分析の第一人者、レオ・レビン「データはいかにテニスを変え、今後どのような影響を及ぼすのか?」
Q10|“嘘”という言葉の代わりに、テニスにおけるもっとも大きな“誤解”は何でしょうか?
A これは時代とともにテニス自体が変化してきたことにもかかわる。今テニスはあまりにベースラインの後方でプレーされているため、サービス対リターンの重要性が欠けている。昔は、試合を見て、ポイントの中で3本目のショットの瞬間を見れば、2人のポジションを見るだけで、どちらがサーバー、どちらがレシーバーかすぐにわかったものだ。しかし、今はラリーの3本目、4本目の選手のポジションを見ても、どちらがサーバーでどちらがレシーバーなのかわからない。なぜなら、現在多くの選手が同じようなプレーをしているからだ。
以下のことが疎かにされている。
1|どのようにサービスポイントを取るか?
2|どのようにサービスゲームをコントロールするか?
3|どのようにリターンゲームをコントロールするか?
近年、テニスで重要視されるのは、どのようにフォアハンド、バックハンドを打つか、ベースラインの後ろでどうプレーするか。だが、多くのポイントはサービスやリターンの早い段階で決まることが多い。攻撃を意識して、ネットに出るなど、コート上のポジションまで考えている選手は一握りだけだ。ポイントはすぐに終わる傾向にある。多くの選手はポイントを組み立てる方法を学んでいないため、2本目のショットという、あまりに早いタイミングでウィナーを狙おうとする。
現在はベースラインでの打ち合いを重要視する選手が多い
Q11|昨年のナダルのリターンポイント獲得率は35.2%(2761本中971本獲得)です。これがクレーコートでは43.4%(1045本中454本獲得)に上がります。この他にも気になる数字はありますか?
A 私がいつも注目するデータはサービスとリターンの確率だ。なぜなら、いまだにその2つにテニスを分けて考えるからだ。面白いのは、ナダルのような選手のデータを見たとき、リターンの数字だけでなく、セカンドサービスのポイント獲得率も非常に高いのだ。
これだけ多くの分析がなされても、古い格言が今も真実を物語っている。「セカンドサービスの質で選手の実力がわかる」。この4、5年にランキングのトップに立った選手は、誰もがセカンドサービスのポイント獲得率と、セカンドサービスのリターンポイント獲得率でもトップであることに気づくだろう。ビッグサーブばかりが注目されているが、セカンドサービスでのパフォーマンスが選手の強みや弱みを理解するのに、大きな助けになる。
Q12|これまで、どの選手がもっともデータを生かすことに成功していますか?
A 私は以前ほど選手やコーチと直接かかわっていないから、答えるのは難しい。現在の選手で誰がより有効にデータを活用しているのか、わからない。ただ、ひとつだけ言えることがある。ロジャー・フェデラーを例に挙げると、この数年の好成績は彼のチームがデータを分析し、バックハンドをより攻撃的に打つ必要があることに気づいたのだろう。
彼は最近、以前よりかなり高い確率でバックハンドにトップスピンをかけている。これにより、彼のプレーのバランスは格段によくなり、相手により大きなプレッシャーをかけられるようになった。以前は「フェデラーのバック側に打っておけば安全だ」と言われていたが、その手は通用しなくなった。
もうひとつ彼のプレーを分析して明らかになったのは、ウインブルドンでの勝敗だ。彼がウインブルドン決勝での勝利(8試合)と、2003年以来の敗戦(7試合)を比較すると、勝負を分けているのはリターンのポイント獲得率であり、特にブレークポイントでの数値だ。
フェデラーのサービスのパフォーマンスは基本的にあまり変わらないが、負けたときはリターンゲームの勝率が急降下している。ウインブルドン決勝勝利のとき、69回のブレークポイントのうち30回を生かしたが、敗戦のとき、53回のブレークポイントでわずか9回しか生かせていない。どちらの場合も1試合平均8回のブレークポイントを迎えている。勝利のときはそのうち平均4回ブレークできたが、敗戦のときは1回しか取れていない。
フェデラーのチームは、彼の対戦相手がサービスゲームのときに2%しかサーブ&ボレーをしていないことにも着目した。フェデラーには、相手がネットに詰めることを気にする必要がなく、とにかくリターンを深く返せばいいという結論を導き出した。今回はベテラン選手の例を紹介したが、若い選手はデータがあふれる環境で育ったため、上記のようなデータを積極的に活用している。デジタル機器に慣れており、すべての情報に通じている。
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