柏井正樹_錦織圭のジュニア時代を振り返って〜【テニスマガジン2008年9月号掲載記事】

次なるケイを見つけるにはどうすればよいか

「『やりたいこと』のじゃまをしない、型にはめない」

——次なるケイを見つけるためにわれわれは何をしたらよいでしょう。

柏井 僕は島根県出身で、大学のときに香川県に行って、しばらく香川でテニスコーチをしていました。平成元年に島根に帰り、島根に帰ってからは、とりあえず「100人にひとりの逸材」という言葉がよく言われるので、ジュニアを100人集めてテニスを教えることから始めました。100人集まればひとりくらいタレントはいるだろうと思ったんですね。

 それから20年が経ったわけですが、その過程にたまたまケイが入ってきたという状況です。今、島根では、僕が教えていた主婦層の方たちが何人かでグループをつくって子供たちを教えています。すると、影響されてほかにもグループができ始め、同じようなことを始めました。うちのテニススクールの場合、ジュニアは100人でキャパがいっぱいで、それ以上、増やすことができないんですが、ただ、そういういくつかのグループから選手としてやっていけそうな子が出たときに、うちに編入してくるという流れができています。これも方法だと思います。

 僕は、底辺をどれくらい広げることができるかが大切だと思います。そして強い選手が編入できる制度をつくることだと思います。テニス協会がやれればいいことだと思いますが、人件費など費用の問題があるなら、商業施設をうまく使って、連携を図ったらよいでしょう。多くの子供たちにテニスを体験させてあげ、その中でテニスがおもしろいと思ってもらい、続けてもらい、タレントある子供たちが能力を伸ばせる場を与えてあげられたらよいと思います。

「テーマだけ与えるアプローチ」「モティベーションの上げ方」

柏井 今回、このフォーラムの講師のお話があったとき、最初はお断りしようと思いました。すごいのはケイであって、僕は何もしていません。何かしたかと言われたら、じゃまはしなかったというだけなんです。ケイがやりたいことのじゃまをしないということは、逆に言うとケイがやりたいことを聞いて、「それをやりたいなら、こうしてみれば…」というアィディアを示したということだけなんです。ただ、これを続けていくと、彼のやりたいことが明確化していきます。

 また、これがやりたいという気持ちで練習に来るのか、今日はこれをやるよとコーチが出すのか、そこで選手の主体性も変わってくるでしょう。それは、すなわちどのようにゲームを楽しみ、ゲームに勝つかということでもあり、それをサポートするというスタンスで、コーチや親が接することがすごく大事だと思います。コーチは、選手がやりたいといったことに対してちょっと待てとなるべく言わず、選手が考えてやる姿勢をサポートすべきでしょう。

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