柏井正樹_錦織圭のジュニア時代を振り返って〜【テニスマガジン2008年9月号掲載記事】

参加者から柏井さんへQ&A

Q ジェームズ・ブレークを破ってツアー優勝し、またラファエル・ナダルから1セット取り、そしてATP100位の壁を破ることができた要因は何だと思いますか?

柏井 ケイのテニスは、僕が考える日本人が世界で戦うために必要だと考えるテニスとすごく近くて、伊達さんがやっているスタイルにも似ています。上手にボールを作り、相手がノーといった瞬間にコートに入って、早いタイミングで返すという、そういうテニスです。そういうテニスをやり続けることができたときに勝てているのだと思います。

 男子は特にみんなパワーがあるので、パワーのあるボールを打たれてからどうするかといっても無理です。よほどのビッグサーバーであったり、鈴木貴男さんのようにネットをとって展開を早くするといったことをやり続けない限り無理だと思います。だから、やはり(前述したような)ノーと言わせてタイミングで勝負することではないでしょうか。

Q もしもケイ君が日本にいたらどうなっていたと思いますか?

柏井 日本にいたらーーというと、結果論なのでわからないです。ただ島根にいたら練習相手がいないという点でダメでしょう。でもそれが東京なら、大阪ならという話でもなく、結局はツアーを回るわけですから、どこに住んでいても同じでしょう。ケイの場合は中1のときから日本代表としてヨーロッパを回らせていただきました。トップ選手を海外派遣するというシステムがJTAにあるわけですから、そのシステムの中に入れる成績を上げることができれば、居住地は問題ないかもしれないです。ただしケイがここまで行けたことの要因として、アメリカで強い選手たちと練習ができたことは当然否定できないことです。 

Q 男子は世界に行かないと無理なのか、女子は日本にいてもできるのか、その辺の見解を聞かせてください。

柏井 あるときJTAの飯田藍さんにこんなことを言われました。僕が「島根に同じようなトップジュニアがいなかったので、ケイの練習相手は僕らのようなおじさん、おばさんでした」と言うと、「それはよかったかもしれないわね。みんな平気でスライスを使うでしょ。ジュニア同士でスライスを打ち合う時代ではなかったでしょうから」と。「いろいろな手を使う大人とやったことが逆によかったかもしれない」とも言われました。なるほどなと思うんです。

 やり方はあると思います。例えば、その選手が全国で勝てる手前の選手であれば、どこにでも大学テニス部はあるでしょうから、そういう上のクラスにアプローチをかけて練習することも手だと僕は思います。日本にいてできないかということについて、僕はある程度までは問題ないと思います。

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