日比万葉「50の質問」テニスは楽しくなかったら意味がない|Player File 11

写真◎日比万葉(Getty Images / テニスマガジン)




テニスだけではなく、すべてが楽しくなったし、気楽になった

Q28片手バックを自己解説してもらえますか?

「99%スライスです(笑)。最近は少しスライス以外もまぜていけるようになりましたけど、以前は1試合に1回打つか打たないかくらいで。相手にしてみれば私の片手バックの高いところを狙ってくるのは当たり前。私でも自分と対戦するならそうするので、考えやすいところはある。それに相手にとってこちらのバックの高いところを狙うというのはAゲーム(得意なプレー)ではないかもしれない。高い軌道で打ったりフォアのストレートが苦手なのに、勝手に得意ではないことをしてくれる。そこを感じ取ることができれば、逆手にとることもできます」



Q29 15年のUSオープン以降は思うような成績が出ない時期もありましたが、どんな思いでしたか?

「プロになったらプロ一本で生活できるようにならなければいけない。自分で勝手にすごくプレッシャーをかけて、そのプレッシャーに負けているという状態でした……」

Q30テニス面ではいかがでしたか?

「フィジカルがすごく弱くて、トレーニングしているのに筋肉がつかない。だから試合ではパワー負けしてしまう、というのが長く続いてしまいました。最近、やっと力がついてきたのですが、時間がかかってしまいましたね」

Q31グランドスラム本戦に進んだという事実が逆に重荷になっていたのですか?

「USで本戦に上がったんだから、と自分でプレッシャーをかけていました……。そのことがトラウマみたいになっていて、グランドスラムの予選になるとエラーニとの試合みたいに、頭が真っ白になって試合に入っていけない。勝つどころか、ずっと1セットを取ることもできなくて……。ほかの大会では大丈夫なのに、グランドスラムではそんな状態になるというのが数年続いてしまいました」

Q32そこからどう抜け出しましたか?

「2017年の終わりに1ヵ月くらいテニスを休んだんです。それが一番のきっかけかもしれない。自分に厳しいタイプだったのでメンタル的にもどつぼにはまっている状態で、本当に疲れてしまって。人生でもそんなに長くテニスを休んだことがなかったので、結果的にそれがよかったのかなと思います」

Q33休んでいる間はどう過ごしていましたか?

「実は日本にいました。横浜の祖母の家に泊まらせてもらって、1週間くらいひとりで旅行にいったり。テニスを始めてから初めて息抜きができた感じでした」

Q34どういう気持ちの切り替えができましたか?

「ずっと“戦いモード”で生きてきたんだなと気づいて(笑)。それがストレスになっていた。テニスはやりたいからやっているのであって、『みんな倒してやるんだ』という感じでプレーしなくてもいいんだって」

Q35テニスがまた楽しくなった?

「テニスだけではなくて人生というか、すべてが楽しくなったし、気楽になった。振り返ると、『あれだけのストレスの中でどうやっていたんだろう』と思うくらい。今は成績がどうこうより、楽しくなかったら意味がないと思っています」

Q36そこからテニスも徐々に上向き、20年2月に自己最高の157位を記録。直後にコロナ禍でツアーが中断してしまいましたが、このときの思いは?

「直前のアカプルコで肩の痛みが激しくなっていて、しばらくテニスは休まないといけない状態だったので、自分のランキングのことだけを考えれば少しラッキーでした。でもテニスは世界中を転戦するスポーツなので、『果たしてツアーは大丈夫なのだろうか』と、ずいぶん大きな視点で心配していました(笑)」

Q37中断期間はどう過ごしていましたか?

「私のいるところはアメリカの中でもコロナの状況が悪かったので、2ヵ月半くらいはテニスコートも閉まっていました。テニスができなかったのでトレーニングやランニングなどできることをしていました。ただずっと家にいて、家族と長い時間を過ごすことができたのはよかったです」

Q38中断期間中に始めたプロジェクトはどんなものですか?

「『くまやん』というコミュニケーションサイトを立ち上げました。私は家もあるし、食事にも困らないけど、そうではない人たちが世界にはたくさんいる。そういった人ほど、必要な情報が行き届いていない。そうした思いを抱いていたところにコロナ禍になって、家から出られず誰とも話さない一人暮らしの人がいるということも知って、コミュニケーションや情報交換の場をつくりたいと思いました」

Q39そうした思いを抱いたきっかけは?

「きっかけのひとつは尾崎文哉コーチに紹介されて何度か訪れた宮崎県の障がい児施設です。障がいだけではなく虐待を受けていた子供も多くて。そうした子供たちが世界にはどれだけいるのだろう、子供たちのために何ができるのだろうと考え始めました。実際、コロナ禍で虐待を受ける子供が増えたということも聞いて、実際に行動に移そうと思いました。今はコミュニケーションの場の提供がメーンですが、いずれチャリティとして売上を寄付できるような形にできればいいなと思っています」

Q40ツアーが再開してどう感じましたか?

「正直、ツアー中断はもっと長引くと思っていたので、再開はうれしいことでしたけど『くまやん』でまだ何もできていない、どうしようって(笑)。ただ特にITFの大会はいまだに少ない状態で、私はなんとか大会に出られるランキングだったので運よくツアーを回れていますが、もっとランキングの低い選手は大変な状態。早く正常なツアーが戻ってくるといいなと思います」


ツアー転戦の難しさはあるが前向きに挑んでいく


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