柏井正樹_錦織圭のジュニア時代を振り返って〜【テニスマガジン2008年9月号掲載記事】
錦織圭選手が中学2年生でフロリダに旅立つまで、ジュニア時代を指導したグリーンテニススクール(島根県松江市上乃木9-26-25)の代表、柏井正樹(かしわい・まさき)さんが2019年6月11日にお亡くなりになりました。58歳でした。錦織選手をはじめ、多くのプレーヤーを育成し、島根県や中国地区のテニス発展に大きな貢献を果たした方です。心より御冥福をお祈り申し上げます。以前に掲載したテニスマガジン取材記事、第9回テニスフォーラムより「錦織圭のジュニア時代を振り返って〜ジュニア育成のあり方(柏井正樹コーチ)」を紹介させていただきます。
ジュニア育成のあり方〜錦織圭のジュニア時代を振り返って〜
テニスマガジン2008年9月号掲載記事「第9回テニスフォーラム」より
主催◎テニスフォーラム
後援◎社団法人日本プロテニス協会、関西テニス協会
期日◎2008年6月21、22日
会場◎兵庫医科大学・平成記念会館(大講義室、体育館)
生涯スポーツとしての愛好家への指導からトップアスリートまで育成・強化に携わる指導者が『効果的なコーチングを考える』ことをテーマとした「第9回テニスフォーラム」。8つ行われたプログラムのうち、ここに錦織圭選手がテニスを始めてアメリカへ巣立つまでのジュニア時代を指導した柏井コーチのセッションから一部を抜粋して紹介します。現在(当時)18歳にして世界で目覚しい活躍をし始めた錦織選手のルーツがここから少し見えてきます。
構成◎青木和子 写真◎小山真司、BBM
回答者|柏井正樹
カシワイ テニス サービス・ヘッドコーチ、日本体育協会公認テニス上級コーチ、上級教師、マスターコーチ、日本プロテニス協会会員、アメリカプロテニス協会プロフェッショナル3(プロフィールは当時のママ)
コーディネーター/質問者|西村覚
島根大学准教授、日本テニス協会強化企画委員会委員長、中国テニス協会ジュニア委員長、島根県テニス協会理事長(プロフィールは当時のママ)
初めてケイを見たときの印象
「リクエストに応えることができた」
——錦織圭(以下、ケイ)が最初に柏井さんのところへレッスンを受けに来たのは5歳のときでした。そのときの印象は。
柏井 最初からターゲットが狙える子供というのが、たぶん100人にひとりくらいいると思うんですが、僕がまだ駆け出しのコーチの頃、ネットの上にちょっと顔が出るくらいの子供が、僕が「狙って」と言ったところへちゃんと狙って打てるのを見てすごく驚いたのを思い出します。ケイもそうでした。打ち方はどうであれ、ケイも「狙って」といったところへちゃんと打てたし、「返して」と言ったらちゃんと返してきて試合ができました。初めからそういう選手でした。
——その最初のレッスンから、グリップなどのスキルを教えましたか?
柏井 初心者のレッスンでは、ターゲットを狙える狙えないというところに始まり、狙うためにグリップはこうで、構えはこうで、スイングは…とやっていくのが一般的です。でもケイの場合、その中にいても明らかに違うレベルだったので、すぐ上のグループに上げました。上のグループは必要に応じた練習テーマがあり、それらのテーマをクリアしていくやり方だったので、手取り足取り指導することはありませんでした。
——つまり、ケイはリクエストに応えられる子供だったと。
柏井 そうです。特に直さなければいけない必要性を感じていたら直しましたけど、直さなければいけない必要を感じない選手に変えるようにいっても、選手は「え?」と思うだけでしょう。
——ターゲットを狙うときの打ち方に、個性は感じましたか。
柏井 ストロークのグリップが厚めだということはありました。このグリップは年々厚くなっていくわけですが、この時点で、特に厚いあたりでボールが打てたとか、球が速かったということはありませんでした。また、とんでもない打ち方もしていませんでした。バランスはよかったです。とはいえ5、6歳の子供ですから、横に走って遠いボールを打つとなるとすぐにバランスは崩れました。でもケイの場合は、崩れてもすぐに立て直せるところがありました。
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