誰でも取り入れられる「具体的なアドバイスをしよう!」バランス指導のスペシャリスト、マーティ・スミス PART2



Q スマッシュでバランスを崩す人の原因は何ですか?

A おそらくフットワークが正しくありません。

――選手がスマッシュ(オーバーヘッド)を打つときにバランスを崩す大きな要因は何ですか? この問題を解決するための正しい技術は何ですか?

スミス 選手がスマッシュのときにバランスを崩す主な原因は、スイングするときに前へ押し出せるように、十分に後方へ下がっていないからです。これが頻繁に起こるのは、フットワークが正しくないからでしょう。

 正しいスマッシュのフットワークはパワーポジションから、まずニュートラルなスタンスに入ることから始まります。そこから後方へ1歩か2歩、クロスオーバーステップ、足を止める前にスキップステップを踏み、ボールを打つと同時に体を前方に押し出します。

 多くの一般プレーヤーはネットに正対したまま後方に小さいステップで下がるため、下がる距離が足りずに強いスマッシュを打つための安定した体勢をつくるのに失敗するのです。

 もう一つ、スマッシュを後ろ足に体重を乗せたまま打ってしまう理由は、スマッシュのコンタクトポイントがサービスと同じだと勘違いしている選手が多いためです。コートのベースライン近くなど深い位置から打つ以外では、スマッシュのコンタクトポイントはサービスに比べて、かなり体の前方になります。それゆえ、スマッシュを打つときのポジションは、多くの選手が思い込んでいるよりも後方になるのです。



練習
スマッシュのバランスを良くする方法

 スマッシュのときのバランスを良くするための効果的な練習メニューは、❶後方に上がったロブに対して、スマッシュを打つように下がりながらワンバウンドさせて、左手でキャッチする方法です。これにより、良いバランスでスマッシュを打つために必要なフットワークとポジショニングを理解できるでしょう。同時に、左腕が空間を正しく認知するためのガイドになるという重要な役割もよく理解できます。

 このキャッチを数度繰り返したあと、❷実際にグラウンドスマッシュを打ち、❸フォロースルーのあとにフリーズさせて、バランスが良いかどうか判断します。

 次は❹ロブをバウンドさせずに空中でキャッチ、❺実際にスマッシュを打ち、その直後、❻フリーズさせてバランスをチェックします。

ナダルが最高のお手本

 私が指導するとき、スマッシュのお手本に挙げるのがラファエル・ナダルです。彼ほどうまく打てる選手はほかにいません。彼がプレーする試合を何度も見てきましたが、スマッシュをミスしたのを見た記憶がありません。素早いラケット準備、フットワーク、タイミングのとり方が、彼のスマッシュを信頼のできるパワフルなショットにしています。

 ナダルのスマッシュの準備には何も問題がなく、完璧なので、いつも比較的簡単に打つことができます。彼はショットの難易度に関係なく、どんなボールも同じようにリスペクトして打っていて、決して軽率に打ったりしません。

 高く上がったロブをナダルが追って後方に下がり、ワンバウンドさせるときは、最大でも15歩です。そこから数歩前に出て、スマッシュにスピードを加えます。結果的にほかの選手よりも長い助走で打つことになります。ナダルがスマッシュを打つときはポジションを後方に下げたあとで、ボールを体より前(もっとも力が入る適切な打点)で打っています。


ナダルのスマッシュを打つ準備は完璧。このあと十分に下がって、打点を前にとる。ミスをする感じがまったくしない。

Q ジャンピングスマッシュを成功させるには?

A “ダイナミックバランス”を理解しましょう。

――選手にとってもっとも爽快で、観客が一番興奮するのがジャンピングスマッシュやダイビングボレーです。しかし、宙に浮いてのショットはバランスを失うために難しいと思いますが、宙で体をコントロールする方法はありますか?

スミス それらはすごくエキサイティングなショットです。うまく打つには、“ダイナミックバランス”をよく理解しないといけません。

 ピート・サンプラスがジャンピングスマッシュを打つときや、ナダルがダイビングボレーを打つときを想像しましょう。彼らは姿勢を保つために両腕、両脚を調整しています。高いボールへの対処法はスタンスを狭めることです。サンプラスのような偉大な選手がジャンピングスマッシュを打つときは、必ずそうしています。一方、ダイビングボレーではスタンスを広げることです。

 ジャンピングスマッシュのフォロースルーでは、腕は普通のスマッシュと同様に、最後は体に向かって振られます。一方、ダイビングボレーでは体重を均等に分散させるために、腕は伸ばして体から離れていき、その後、体に近づいていきます。どちらのショットも背中はなるべく真っすぐに保ち、肩の高さを揃え、頭は上げたままにすることで、重心が基底面(スタンス)の上にくるようにします。


ピート・サンプラス


ラファエル・ナダルのダイビングボレー。スタンスを広げてバランスをとる。

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