誰でも取り入れられる「具体的なアドバイスをしよう!」バランス指導のスペシャリスト、マーティ・スミス PART2
Q 相手のバランスを崩すカギやパターンは何ですか?
A 相手に“驚き”を与えることです。
――相手のバランスを崩したり、混乱させるのにカギとなる要素やパターンは何ですか?
スミス 相手のバランスを崩すのに重要なのが“驚き”です。例えば、ドロップショットを仕掛けるときは、まずパワフルなフォアハンドを打つように見せかけ、相手に後方に体重を乗せさせてディフェンシブな状況になるのではないかと思わせることが重要です。そこでドロップショットを打つと、相手は後方に体重が乗っていて、ボールに追いつくには前方に素早くダッシュしなければならないことに気づくと、バランスを崩したりつまずいたりするのです。
フェデラーがフォアハンドで仕掛けるとき
ロジャー・フェデラーがフォアハンドを打つと見せかけてドロップショットを打つと、ほとんどの相手はドロップショットに反応するときにベタ足になってしまいます。それができるポイントのひとつ目は、彼はフォアハンドのテークバックで完璧にラケットを止められることです。このコンマ何秒ほどの間に思いきりフォアハンドで叩くか、ドロップショットを打つのにベストなタイミングなのかを判断します。
ふたつ目は、彼のフォアハンドの握りはとても薄いため、わずかなグリップチェンジだけでドロップショットを打てるのです。このショットを実行した場合の効果をさらに倍増させることになります。
フェデラーがバックハンドで仕掛けるとき
フェデラーのバックハンドのドロップショットは、さらに予測が難しいです。ほかの選手と異なり、彼はスライスのバックハンドを打つときとまったく同じ深いテークバックでドロップショットを放ちます。フェデラーが自分の狙いをカモフラージュするのは、相手がスプリットステップをした瞬間で、そのバランスを大きく崩しにかかります。それが彼の素晴らしいキャリアの中で多くのポイントをもたらしてきたのです。
深いテークバックからドロップショットを打つフェデラー。相手はスライスかドロップショットかわからず、動き出してバランスを崩す。
深いテークバックからスライスを打つフェデラー。同じテークバックからドロップショットも打つため、相手は予測が難しい。
アンドレスクが仕掛けるとき
ショットのプレースメント、スピード、スピン、高さを混ぜ合わせることで相手を驚かせ、バランスを崩すこともできるのが、ビアンカ・アンドレスクです。ショットを混ぜ合わせることで、相手にボールに近づきすぎることを強いたり、ボールに届かせなかったり、あるいはタイミングをミスする可能性を高めます。相手はボールを打つときに、前に体を伸ばすことになったり、後方に倒れたりしてしまうのです。
ここに挙げたスキルをアンドレスクは備えており、そのバリエーション豊かなショットは、彼女を危険でイライラさせる対戦相手にしています。彼女のプレーを実際に見たとき、珍しいサイドスピンのフォアハンドを放ってから、スライスのフォアハンドを浅い位置に落とし、時速160㎞近いバックハンドをコート深くへ放ったあとに、ドロップショットを決めました。この多才なショットが相手のバランスとタイミングをメチャクチャに崩し、昨年のロジャーズカップとUSオープンを19歳で制することができた大きな要因になっています。
ビアンカ・アンドレスク
珍しいショットのパターンで相手を驚かせ、そのバランスを崩すこともできます。例えばデュースサイドのサービスに対するリターンで何度もダウン・ザ・ラインのバックハンド側へ返したあとに、同じリターンの場面で突然クロスへ、相手のフォアハンド側へ打てば、相手はほぼ間違いなく逆を突かれることになります。体重をニュートラルではなく、反対方向に乗せた状態になれば、踏み込みが弱くなり、相手は体を伸ばした状態のまま、力のないショットを打つ可能性が高まります。
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