レベルアップの必須能力「テニスのスピード」前編「テニスの動きのセオリーを学ぶ」
Topic1
テニスで重要なのは多方向への加速と減速
テニスのスプリントは特異
なぜなら狭い範囲を
動くことが多いから
―― 「スピードはスポーツにおいて基本的な要素で、同時にもっとも複雑でもある」とティム・レイデンは『スポーツ・イラストレイテッド』(2012年)の記事に記しています。実際にスピードはテニスの中で基本的な要素で、もっとも複雑なのですか?
大地 はい、スピードはテニスの中で基本的な要素です。スピードは2つの要素に分けられます。ひとつはスプリント技術。もうひとつは多方向のスピード、つまり動きとフットワークになります。
スプリント技術は多くのスポーツで基本的なことです。走り方を知らなければ、スピードを上げる能力は限られてしまいます。テニスにおけるスプリントはとても特異なものです。なぜなら、比較的狭いテニスコートの中では、テニス選手はトップスピードに乗るためのスペースや距離がないからです。さらに、テニス選手は手にラケットを持って走ったり、動いたりしなければなりません。
最後に、テニス選手はあらゆる方向に動かなければならないため、重要なのは直線スピードだけではないということです。テニスで重要なのは多方向への加速と減速です。このようなテニスの特質が“テニスの中のスピード”をさらに複雑にするのです。
加速と減速をするためには
パワーが必要である
――あなたはUSTAの選手育成プログラムのストレングス&コンディショニング・ヘッドコーチです。ストレングス&コンディショニングはテニス選手にとって非常に重要ですが、アメリカの若いツアー選手のスピードアップに、あなたの仕事はどの程度貢献しているのでしょうか?
大地 私たちがテニスのストレングス&コンディショニングのプログラムで行うほとんどすべての内容が選手のスピードアップに貢献しています。
――ストレングスやコンディショニングとスプリントスピードとの関係は何ですか?
大地 テニスは多方向への加速と減速が必要です。加速、減速をするためにはパワーを使わなければなりません。コート上で選手が加速したり、減速するために必要なパワーを生み出すには、そもそもパワフルで、安定し、機動力、調整力を持っていなければなりません。もうひとつの関係として、そのパワーの大きさ、安定感、機動力、調整力をすべて俊敏でバランスがとれた状態に保たなければならないのです。
しかもテニスでは、その動きを長い時間繰り返さなければなりません。3セットマッチなら2時間、5セットマッチなら4時間を超えることもあります。だからこそ、コンディショニングはとてつもなく重要なのです。
―― テニス史上最高の3選手、ナダル、フェデラー、ジョコビッチ、女子ではビーナス&セレナのウイリアムズ姉妹やジュスティーヌ・エナンらは恐ろしいほどスピードがありました。スピードの面で彼ら6人に共通していた点は何でしょうか?
大地 すべての面において秀でた運動能力に加えて、彼らは素晴らしいボール判断(認識)、球種予測能力も備えています。なぜテニスのスピード(動きとも言い換えられる)が非常に複雑であるのかという、もうひとつの理由に挙げられます。
例えば陸上トラックの上でなら、彼ら6人のチャンピオンより速く走るアスリートはいるでしょう。反応速度になると、彼らと同様か、あるいは彼らより速いかもしれません。しかし、テニスコートのサイズと、特に現在のテニスにおける猛烈なスピードにおいては、ボールのスピード、スピン、軌道と相手選手の体勢など、相手の次のショットを予測することがとても重要な要素となるのです。
スピードには2つの要素がある
❶スプリント技術(動き)
❷多方向のスピード(フットワーク)
左右方向への動き
斜め後ろ方向への動き
斜め方向への動き
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