「戦術家」になるためのスマートショットセレクション 6つのカギ

写真◎Getty Images


KEY4 厳しい状況での正しいショットセレクションを知る

テニスの確率、基本を理解することで、難しい状況 でも「正しい選択」ができる

 賢いショットセレクションは、テニスの確率を理解して実践することが必要です。具体的な例を挙げると、走りながらやっと追いついたボールでパッシングショットを狙うような状況です。

 完璧なパッシングショットを打つための時間、ポジション、十分な角度がない状況では、当然ミスはしたくありません。この解決法は「トップスピン(バックハンドでは時折スライスになる)をかけて相手の足元にボールを沈める」ことです。そうすることで相手はローボレーかハーフボレーで打たなければならず、効果的なショットが打てないため、ポイントが続く可能性が高まります。そして、次のショットでパッシングを狙うか、ロブで頭上を抜くことができる可能性が高まります。

 オールタイムレジェンドのビヨン・ボルグは、ピンポイントでトップスピンのかかったパッシングショットを打つことに長けていました。それによって相手のスピード、アジリティー、柔軟性と技術が試されたものです。相手から弱いローボレーを引き出したら、ボルグはより容易に打てるパッシングショットでウィナーを決めることができます。

 逆のパターンを考えましょう。自分がネットに出るとき、相手がパワフルなショット、または足元に正確に落ちるショットを打ってきたとしましょう。まずは自分が難しい状況に置かれたことを認めなければなりません。無謀なこと、派手なプレーは必要ありません。確実なローボレーかハーフボレーを打つ必要があります。

 この難しい状況から抜け出し、可能なら自分の優位性を取り戻し、ボレーかスマッシュでポイントを取るためには、戦術的には深くダウン・ザ・ラインへ打つことが重要です。完璧なお手本が欲しいなら1987年のウインブルドンを制したパット・キャッシュのプレーを映像でチェックしましょう。彼の賢く、技術レベルの高いボレーを参考にして、ネットでいかにディフェンシブな状況をオフェンシブに変えるのかを学びましょう。

 問題というのはしばしば、「一般的な状況でボールをどこへ打つべきか」というような、かなり基本的な場合があります。時に選手はこの基本的な問題に気づかないことがあり、トッププロでさえも混乱させることがあります。

 23歳のアンドレイ・ルブレフは2020年に5大会でツアー優勝を果たし、キャリアハイの世界ランク8位を記録するなどブレークしました。サービスが改善されたのはもちろんですが、それよりも大きな理由は、遅ればせながら「正しいショットセレクション」を理解したことにありました。

 ルブレフのコーチを務めるフェルナンド・ビセンテが話した言葉が衝撃的でした。

「アンドレイは『プレーの仕方を誰にも教わっていない』と私に言っていた。フォアハンドをどこへ打つのかを決めるとき、なぜクロスに打つのか、なぜダウン・ザ・ラインに打つのか、どんなときにインサイドイン、どこでインサイドアウトを選ぶのかを、教わっていないというのです。テニスをプレーするには誰もが絶対に理解していなければいけないことです。もちろん今は彼も理解できています。間違った選択をしたとき、なぜそのショットが機能しなかったのかも理解できるようになっています」

 このルブレフのようなショッキングな事象は、若い選手がストローク技術を習熟したら、すぐにコーチは「ショットセレクション」を指導すべきであることを教えてくれます。


ルブレフはかつて、状況に応じてショットを選ぶこと、どこへどのように何を打つべきかを知らずにプレーしていた。しかし今の彼は正しいショットセレクションを行い、大きく飛躍した


追い込まれたときのパッシングは 相手の足元へ ── 困難から抜け出し、優位性を取り戻すにはセオリーがある


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