「天賦の才が今……」ゴラン・イバニセビッチ Special INTERVIEW(1996年5月5日号)

写真◎Getty Images



6-0 6-0で勝つようなテニスはしたくない。退屈すぎるんだ。そういうときに何かやってみたくなって……

ーー人を信用しないように変わらなければならなかったのを、どう思いますか。

「僕は、完全には変わっていないよ。まだ、うっかり抜けているような気がすることがある。でも、変わるのはたいへんだよ。以前よりは注意深くなったけど、変わるのはキツイ。人に良い顔をしすぎるのが、僕の困ったところだし、そのお陰で傷つくんだ。誰にもノーと言えないから、ノーと言わなければならないことがあると、自分を慰めたり、友達にわかってもらおうとしたりしなきゃならない」

ーー自分の変わり方をどう思いますか。

「だから、完全には変わってないんだ。まだ抜けているときがある。変わるのはたいへんだからね。急に悪いヤツにはなれないよ。前より注意深くなったけど、ときどき人に良い顔をしすぎるのは、僕のすごく悪いところで、自分でも傷つくんだ。だから誰にもノーと言えないんだ。ノーと言わなきゃならないときには、自分自身にも人にも違和感を覚えざるを得ないし、わかってもらえない場合もある。ともかく、イエスと言ってもノーと言っても、怒らせてしまう」

ーーツアープロには、同じような人が多いと?

「さあ。ほかのヤツのことは言えないな。何人か友達はいて、そいつらが良いヤツだってことはわかるけど、ほとんどはツアーで顔を合わせるだけで、もちろん私生活はわからない。でも、関わり合いにならない方がいい連中と関わっているヤツも多いね。大丈夫、君のお金でこんなことをするんだよ、投資みたいなものだ、と連中は言う。それでトラブルになるんだ。

 トラブルになったら、友達に会うのが一番だ。あるいは、1ヵ月とか1年、ツアーから離れたときとか、プレーが不調なときに、本当の友達なら、近づいてきて手を貸そうとしてくれる。そういうときにこそ本当の友達かどうかがわかるんだ」

ーー試合中に、集中力をなくすのはどうしてですか。

「コートで何もかもうまくいっているようなときには、ときどき退屈になってしまうんだ。6-0 6-0で勝つようなテニスはしたくない。退屈すぎるんだ。そういうときに、何かやってみたくなる」

ーーそれでピンチになる?

「ああ、悪い癖だね。試合で20本もサービスエースを取って、万事順調というときに、新しいサーブを打ちたくなったりする。そうして自分で自分を苦しい立場に追い込んで、苦しくなってくると『俺は何をやっているんだ』と思う。それでイライラしてきて、いつものサーブに戻りたくなる。そうするとサーブミスをし始めて、ピンチになるんだ。それから、順調な滑り出しだったのに、順調じゃなくなってきて、イライラしてくることもある。強いヤツと対戦したときは、そういうイライラのせいで負けることが多い。でも、格下のヤツと対戦したときは、それでもまだまだ挽回するチャンスがあるけどね」

ーー勝てるチャンスがあったのに、強い相手に負けたときは、あとでどういう気持ちになるのですか。

「ひどい気分さ。良いプレーをしてて、何もかもうまくいっていたという自覚があるんだから、自分で自分に腹が立つ。負けるんなら負ける、相手の方が良いプレーをしていたんなら、勝たせてやるさ。でも、自分がバカなことを考え出そうとしたとか、打ったことのないショットを打ってやろうとかして負けるのはダメだ。何で負けたかっていうと、僕の頭にバカなことが起きたからっていうんじゃ、それは相手が僕を打ち負かしたんじゃない。僕はそういう負け方をいやになるほど何度もした。まあ、最近は段々ましになっているとは思うけど」

ーーそういうプレーをして、自分で自分を笑い、気が変になったに違いないと思ったりすることもあるんですか。

「ああ、何度もね。笑って、どうなっているんだ、と思う。この間も、理由なくイライラし出して、サーブを2本ミスしたあとにぶつぶつ言い始め、ピンチを招いてしまった」

ーー顕著な例をひとつ、挙げることはできますか。

「特にひとつの試合を挙げることはできないけど、理由もなくバカな負け方をした試合はたくさんある。ただやる気を失って、挽回したいと思ったときにはもう無理だったという試合がね。そういうときは、八百長をしてるように見えるらしい。八百長なんかしていないのに、みんなに『どうして八百長なんかしてるんだ?』と聞かれるんだ。自分でピンチをつくって、挽回したいだけどできない。何か、思考力の遮断みたいなものなんだ。何もないところからとんでもないピンチをつくり出して、八百長をしているみたいに見えるけど、もちろんそうじゃない。もうそれ以前のようにはプレーできなくなって、コートでは何もかもひどく見えるんだ」

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