ショーンボーン博士のテニスゼミナール〜「今回のテーマは〈ビッグポイントとは?〉」
ビッグポイントを考える 2
ゲーム分析をするときは試合経過をたどらなければ意味はない
前述の二人の著者に話を戻しましょう。彼らが事例として引用したゲーム状況は、タイブレークでの4つのマッチポイントで、試合全体を詳細に見極めておらず、外見上明らかな事実(4つのマッチポイント)のみに触れたものでした。しかし、100年前にテニスが始まって以来、どの試合においても、選手にとって試合を決するポイントはただ一つだけ〈マッチポイント〉を失うときだけです。それで試合は終了です。
それ以外は、場合によってはいつでも変更することができます。
すでに今年のオーストラリアン・オープン準決勝でのケルバー対ハレプ(6-3、4-6、9-7でハレプが勝利、獲得ポイントはハレプ116ポイント対ケルバー103ポイント)や、決勝のウォズニアッキ対ハレプ(7-6、3-6、6-4でウォズニアッキが勝利、獲得ポイントはウォズニアッキ110ポイント対ハレプ108ポイント)なども、数々の奇跡が起きた試合です。
オーストラリアン・オープンの女子シングルス決勝を戦ったウォズニアッキ(左)とハレプ(右)。ハレプは準決勝のケルバー戦、このウォズニアッキ戦も大接戦だった
DATA1 | 2018 Australian Open | 獲得ポイント比較
また、男子決勝のフェデラー対チリッチは第4セット後(6-2、6-7、6-3、3-6)、獲得ポイントは、すでにフェデラー123ポイント対チリッチ112ポイントと、フェデラーが11ポイントもリードしていました。セットカウントは均衡していても、フェデラーのほうが断然優秀な状況でした。
私の統計から見ると、チリッチが試合終了までにポイント合計でリードし、試合を制することはほぼ不可能でした。
先の二人の著者が引用した試合は、ジョコビッチがすべてのマッチポイントをセーブし、1ポイントのリードで試合を制しています。結果的に彼は、ケルバーと対戦したハレプ、ハレプと対戦したウォズニアッキ、チリッチと対戦したフェデラーなどと同様に、優秀だということです。
どの試合も多くの要因に左右され、それぞれの経過は異なっています。
テニスのゲームあるいはマッチを分析しようとするときは、それらの事実を尊重し考慮しなければなりません。概算したり、合計数値、あるいは推察から解説したりしてはいけないのです。そもそもこの世に同一のストロークなど存在しない上、互いに同一の試合経過をたどることもありません。さまざまな試合局面における瞬間的な内的状態を、客観的または主体的に判断できるのは本人(選手自身)だけです。それ以外はすべて推察を語っており、従って〈ビッグポイント〉についても然りです。
DATA2 | 2018 Australian Open | 男子シングルス全127試合のうち、獲得ポイントの得失差が僅差のもの(10ポイント以内)
解説
※獲得ポイントの得失差が10ポイントいないの試合をピックアップ。全127試合のうち17試合が該当し、そのほかの110試合は11ポイント以上の差をつけて勝負を終えている。つまり多くポイントを取ったほうが勝利する確率が高い。
※「帯がグリーン」は同ポイント数で勝負がついたケースで3試合、「帯がオレンジ」は1、2ポイント多く獲得して勝利したケースで3試合あった。
※「帯がグレー」は勝者が敗者よりも獲得ポイントが少ないケースで6試合あった。プレーヤーがすべてのポイント、セットで全力で戦っていない場合など、稀にこのようなことが起きる。
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