WIMBLEDON LEGEND STORY〜ウインブルドンを彩った選手たち〜




LEGEND PLAYER 2
ビヨン・ボルグ
男子シングルス優勝 1976〜80年

強く寂しいアイスマン



 ビヨン・ボルグの引退を告げる外電が流れたのは、1983年1月だった。26歳。ヒマラヤの登山口、カトマンズからの至急電に世界中が驚愕し、外電はこう結ばれていた。

「最後のプレーは4月の東京で」

 ウインブルドンの若獅子の最後の契約は東京で開催される「世界4強・サントリーカップ」だった。

 アイスマンと呼ばれた。16歳でウインブルドン・ジュニアに優勝。当時は珍しい両手打ちバックハンドのベースライン・プレーヤーだが、強烈なファーストサービスからサーブ&ボレーも仕掛け、左右から飛び出す強烈なスピン、何よりも感情を抑えた沈着冷静なプレー、精神力……。

 ジョン・マッケンローとの2度の決勝対決は、テニス界の運命を変えた。特に1980年の戦いは、いまもウインブルドン史上最高の試合として語り継がれる。

 マックが先行し、ボルグが2セットを奪い返した第4セットはタイブレークに。マックがマッチポイントを5本退け、ボルグはセットポイントを5本凌ぎ……18-16でマックが奪ったが、ここからが“アイスマン”だ。ファイナルセット、ファーストサービスを確率74%で攻め込んで7度のサービスゲームで与えたポイントは僅か2。最後は8-6だ。

 長い金髪をバンダナで押さえ、胸にフィラのマーク。初めて獲得賞金100万㌦を突破。世界中の若者が熱狂し、第1号のテニスアイドルはその注目に潰された。旅の宿の深夜に、85ポンドに固く張られたガットがプツンと切れて目覚める……寂しい伝説が深い孤独を物語った。


80年に達成した5連覇はいまだフェデラーと並ぶタイ記録だ


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