WIMBLEDON LEGEND STORY〜ウインブルドンを彩った選手たち〜



LEGEND PLAYER 3
ピート・サンプラス
男子シングルス優勝 1993〜95、97〜2000年

ギリシャの絆



 ボルグがウインブルドンで5度目の優勝を飾ったのは1980年だ。不滅と言われた記録を19年後、ピート・サンプラスが塗り替え、翌2000年に記録を「7」とした。

 決勝の相手は温和なサーブ&ボレーヤー、パトリック・ラフター。前年夏にナンバーワンに上りつめていたが、ピートのサービスは火を噴き、リズミカルに攻め込んだ。第1セットはタイブレークで落としたとはいえ、与えたブレークポイントは2本。それもセーブして完勝だった。

 決着がつくと、サンプラスはスタンドをキョロキョロと見回した。家族席のコーチが指さす二階席に、ようやく両親を見つけた。初めて、ピートが頼み込んでやっと見に来てくれた。チャンピオンは客席をかき分け、父親と長い抱擁を交わし、センターコートに拍手が沸き上がった。

「観に行ってもし負けたら大変だって、絶対に来なかったんだ」

 ギリシャ系アメリカ人だ。『ギリシャの結婚式』(原題My Big Fat Greek Wedding)という映画があるが、ギリシャ人は異常なまでに家族の絆が強いという。4人兄弟の3番目、痩せっぽっちのピートには、旅から旅のツアー生活はつらかった。コーチのティム・ガリクソンが癌に倒れたオーストラリアン・オープンでは試合中のベンチで涙を流し、強さの裏にそんな優しさを持つキングだった。

 2001年、初めてフェデラーと対戦し敗れた。「セカンドサーブが僕のファーストより速かった」と舌を巻いたフェデラーが、サンプラスの記録を塗り変えるのは、1年だけ早い18年後の2017年だった。


2000年に4連覇で7度目のV。90年代を支配した最強王者だった


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