WIMBLEDON LEGEND STORY〜ウインブルドンを彩った選手たち〜



LEGEND PLAYER 4
マルチナ・ナブラチロワ
女子シングルス優勝 1978、79、82〜87、90年

鉄の女の“楽しむ力”



 ニューヨークにある『レストランニッポン』がウインブルドンに出張サービスしていた1990年代前半。マルチナはよく日本選手にメモを託していた。「ライスボール、サーモン4、プラム4」。鮭と梅干のお握りだ。

 チェコスロバキアから米国に亡命したのが75年。豊富な食料に感動して食べまくり、ブクブク太った。それを改めてコーチ、マネジャー、フィジカルトレーナー、栄養士などを雇い、テニスにチームという概念を持ち込んで強くなった。

「鉄の女」と呼ばれ、ウインブルドンのあらゆる記録を作った。通算120勝14敗、勝率90%。単複混のタイトル合計20はビリージーンキングと同じだが、6連覇を含む9度のシングルス優勝にはシュテフィ・グラフもセレナ・ウイリアムズも届かない。芝の上を無駄なく流れるサーブ&ボレーが美しかった。

 ウインブルドンの初勝利は73年で、相手は英国のクリスティーヌ・ジェーン。最後の勝利は47歳だった04年の1回戦だが、「クリスティーヌの末娘アマンダが杉山愛と戦っている」と苦笑いした。最後の1勝は6-0、6-1。5-0から1ゲームを“差し上げた”ものだった。

「何ごとも楽しまないと。テニスが嫌になれば別のことをするのよ。実業界の偉い人たちに講演を頼まれても、言うの。大事な人生、嫌なことをすることはないですよって」

 9度目の優勝から4年後に決勝に進みフルセットの末、コンチータ・マルチネスに敗れた。ベンチでガックリ肩を落とす37歳を、コンチータが抱きしめる姿が印象的だった。


87年に6連覇を果たしてからは2度決勝でグラフに屈したが、90年に前人未踏の9度目の優勝


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